栄養失調と病気の悪循環と戦う
国連大学中南米バイオ技術プログラム(UNU/BIOLAC)
貧しい人々の生活は危険に満ちている。十分な食糧を買う金がなければ、栄養失調と病気の悪循環に陥り、命を失う危険がある。栄養失調は病気に対する体の抵抗力を弱め、病気は栄養失調をさらに悪化させる。
細胞が成長するためには、蛋白質とカロリーが必要である。それらが足りないと、重要な組織、プロセスが正しく進んで行かない。腸の粘膜や筋肉壁は栄養失調に影響されやすい組織で、それらが弱くなると、食料を十分に吸収できなくなる。さらに栄養失調が進めば、抗体や白血球の生産が遅くなり、感染症に対する抵抗力が衰える。栄養失調が人の死の直接の原因ではない場合でも、病気に罹りやすくなることがある。
さらに病気は栄養失調に深刻な影響を与える。病気になると、多くの食料を取らなければならない。たとえば熱が出ると、人体の新陳代謝が早くなり、多くのエネルギーが必要になる。だが病気になると、食料の摂取が減るのが普通である。病気の体が消費する食料はいつもより減少し、消費する食料を吸収することさえ難しくなる。
栄養失調と病気は個人、家族、社会に大きな実質的な損害を与える。まず個人の生産性が低下する。栄養が足りなくなれば、脳の働きが悪くなり、体を動かす仕事での集中力が欠け、気持ちが落ち着かなくなる。働いていても疲れやすく、頻繁に休みが必要になる。
病気は収入にもひびく。急性の病気は家の稼ぎ頭をベッドに縛りつけることになる。もし貧乏な農民が植え付けや収穫の時期に病気になると(雨季には病気になりやすい)、それは借金や農地を失う危機への道につながる(貧しい国では、社会保障に頼ることもできない)。
国連大学の食糧・栄養プログラムおよび中南米バイオ技術プログラム(UNU/BIO LAC、本部カラカス)に加わっている研究者たちは、貧しい人々が栄養失調と病気の悪循環から脱出できる道を見つけようとしている。同プログラムはラテンアメリカで、貧しい人々を指導する立場にある科学者や保健担当者たちを対象に研修コースを開いている。
9月29日から10月25日まで、チリのサンティアゴで国連大学の「食糧・栄養政策とプログラム:お互いから学ぶ」が開かれた。貧しい国々では経済、人口等の事情が急速に変化しており、そうした国々で栄養の監視と疫学を中心に、食糧と栄養の問題への取り組み方を学ぼうというわけだ。
またUNU/BIOLACは10月6日から10日まで、ペルーのリマでブルセラ症研究ネットワークのメンバーのためのワークショップを開いた。ブルセラ症は家畜や未殺菌の乳製品からうつる感染症の熱病である。ワークショップにはラテンアメリカ16カ国のメンバーが参加、ブルセラ症についての最新の情報を交換、またカナダの獣医学研究所の研究者から学ぶ機会を得た。
国連大学はさらに10月8日から10日まで、鉄分欠乏症の制御についての国際ワークショップをサンティアゴで開いた。鉄分の不足は貧血症を招きやすい。貧しい国々の男性の3分の1、女性の半分は貧血症だろうと言われている。そうした国での食事は野菜が中心で、肉類に比べて鉄分の含有量が少ない。また十二指腸虫などの寄生虫に、せっかく吸収した鉄分を横取りされることも多い。貧血症は心身の機能を低下させ、月経時や妊娠中の女性の場合、エネルギー不足、疲労、集中力の不足の原因になる。今回のワークショップでは、鉄分を強化した食品の供給など、鉄分不足を補うための新しい方法が検討された。
国連大学は11月にも2つのコースを予定している。一つはサンティアゴでの「ラテンアメリカの若い研究者のためのリーダーシップ」で、若い食糧専門家たちのリーダーシップを高める機会を提供、教師、プランナー、栄養指導者としての職務の向上をはかろうとするものである。もう一つのコースはキューバのハバナで開かれる「バクテリア内の抗体分裂とバクテリオファージの溶解蛋白としての発現」である。B細胞からのRNA抽出、DNAのシーケンシング、シングルチェーン・フラグメント・ベクターのクローニングなどの技術を参加者に教えることになっている。
これらの国連大学研修コースはすべて、貧しい人々の生活を不安定にしている病気や衛生上の危険を取り除くことを目的としたものである。