1997年 11月     


産業の効率を高め、地球を救おう
第3回ゼロ・エミッション世界会議は訴える

「グリーン」派、つまり環境保護派と産業人は、お互いに相容れない人種だというのが、一般の通念である。環境保護派に言わせると、産業人は利益を追求することに熱心で、企業による天然資源の浪費や、地球の汚染を進めるばかりだと言う。逆に一般の産業人にとっては、過激な自然愛護グループや、彼らの自然保護運動、企業にとって有害なルールは、迷惑しごくなものに映る。

これまではそう見えたものだった。だが今や企業とグリーン運動の中から、新しく手をつなぐ動きが芽生えている。たとえば国連大学のゼロ・エミッション研究構想(UNU/ZERI)がそうだ。この研究構想は過去3年間、数百人の産業界のリーダーと環境科研究者に働きかけ、天国で結ばれる環境と産業の結婚とも言える構想の研究開発を続けてきた。

ゼロ・エミッション研究構想が追求しているのは、廃棄物を出さない製造業であり、その手本になるのが自然のリサイクル・プロセスである。自然界には廃棄物がない。それは一つの種が出す廃棄物が他の種にとって有益な栄養源になるからだ。さまざまな産業をグループ化すると、一つの産業の廃棄物を他の産業の原材料にすることができる。UNU/ZERIは産業界の新しい基準、つまり利用可能な資源を最大限に使い、大気、水、土壌へのすべての廃棄物をゼロにするという基準を示しているのだ。

デュポン会長のエドガー・ウーラード氏は、産業界はこれまで総合品質管理およびカンバン方式によって、欠陥ゼロと在庫ゼロの目標を追求してきたが、ゼロ・エミッションはこうした努力の延長線上にある、と言う。

ゼロ・エミッションの概念が環境主義者にも、産業界にも広く知られるようになったため、この運動へ参加する熱心な政治家も現れている。

ナミビアのサム・ヌジョマ大統領は第3回ゼロ・エミッション世界会議で、出席者に対してこう語った。「UNU/ZERIは力強い運動だ。きれいな空気、水、食糧、住居、持続可能なエネルギーに対する、全世界の高い需要に応えようとしている」

今年の世界会議は7月31日から8月2日まで、「地球規模の環境と産業の成長の共生」を掲げて、ジャカルタで開催された。スハルト・インドネシア大統領が開会の辞を述べた。会議の最も重要な成果は参加者による宣言である。ジャカルタ宣言と呼ばれるこの文書は、参加者が将来達成したいと考えている、ゼロ・エミッション関連の10項目の目標と、それを達成する方法をまとめたものである。天然資源の生産性向上、世界の科研究者による新しいゼロ・エミッション技術の交流についても合意された。宣言にはフイジー、インドネシア、ナミビア3国の国家元首が署名した。

また世界会議では、以下の9項目に及ぶ研究の進行状況、情報の交換が行われた。

  • 東京大学生産技術研究所の鈴木基之所長は、日本の54人の大学教授による総額10億円の4年計画の研究構想を明らかにした。
  • サム・ヌジョマ・ナミビア大統領は、同国政府が国内におけるゼロ・エミッション活動の実施に100万ナミビアドル(約3,000万円)を提供したことを報告、また来年の世界会議をナミビアで開催することを提案した。
  • 国連開発計画(UNDP)のアンダース・ウィジクマン総裁補は、UNDPがゼロ・エミッションの専門科学雑誌発行を支援すると述べた。
  • 株式会社荏原製作所と米国のラディアン・インターナショナル社は、アジアにおける各種のゼロ・エミッション事業のために提携すると発表した。
  • インドネシアの西ジャワ州知事は、州内で育ちつつある繊維産業のために、ゼロ・エミッション工業団地の設計と建設を命じる政令に署名したと語った。
  • インドネシアの著名なヤシ油とパイナップルの大手メーカー、アストラ社とグヌグン・スウ社は、それぞれの工場でゼロ・エミッション技術を利用する計画であることを発表した。
  • 第三世界科学アカデミー農業委員会のケト・ムシゲニ委員長は、UNU/ZERIによって、アフリカではホテイアオイがマッシュルーム栽培の貴重な材料になっている、と述べた。
  • 日本の産業界および地方自治体の代表者45人が、ゼロ・エミッションの概念を実現して行く過程において得られた成果を説明した。

世界会議で紹介されたのは、将来の計画やプロジェクトだけではない。技術革新や熱心な努力に対しては栄誉と賞賛の言葉が贈られた。今年の国連大学ユニーク・リーダーシップ賞は、コロンビアのビチャダにある環境研究センター「ラス・ガビオタス」の創設者・所長のパウロ・ルガリ博士に贈られた。この賞は毎年、ゼロ・エミッションにユニークな貢献を行った人々に贈られている。国際選考委員会がルガリ博士を受賞者に選んだのは、コロンビアでの森林再生プロジェクトとゼロ・エミッション産業とを組合わせた、創意を評価したからである。賞はゼロ・エミッション構想を表わすブロンズの彫刻である。

この世界会議はメディアの大きな関心を集めた。シンガポールのテレビ局「アジア・ビジネス・ニュース」は30分の番組を制作、NHKも夜のニュース番組で10分間の特集を組み、会議の内容を紹介した。またナミビアでも数多くの番組が制作された。