21世紀のアジアの大学をどうする
アジア太平洋地域高等教育会議が討議
教育こそが、国と国民の繁栄をもたらすカギというのが、最近の世界中の一致した見方だ。一国の生活水準向上の戦いはまず教室から始まらなければならないとする、この考え方に異論を唱えるものはいない。
アジア各国が目覚ましい勢いで成長を遂げつつある背景には、それらの国の政府が、教育水準を高めるべく必死の努力を重ねて成果を上げてきた事実がある。これらの国の教育施設への投資と教育そのものへの熱意を、ほかの国々は見習うべきだ。この地域の各国政府は今や、自分たちの未来の国家経済が依存すべきは、製造技術と安価な労働力ではなく、知識を基盤とする情報産業であると考え始めている。このことが、大学教育の重要性を再認識させると同時に、新たな悩みも生むことになった。
アジアの初等教育のレベルは世界中の教育関係者の羨望の的だが、その一方で、アジアの大学は過大な負担にあえいでいる。学生の数が増えるなかで、一般からの寄付が減り、不十分な施設でやりくりせざるを得ない大学の現状に、各国政府は重大な関心を示し始めている。今のままでは、情報産業が求める知識、技術、創造力を学生たちが身に付けることができないのでは、という心配が出てきたからだ。
アジア諸国の大学に関するこうした悩みの解消に手を貸す目的で、「21世紀に向けた国家戦略と地域協力」と題した国際会議が1997年7月8日から3日間、東京の国連大学で開かれた。会議は、国連大学、ユネスコ、文部省、アジア・太平洋地域大学連合が共同で開催した。
域内の学術協力の強化と大学教育の改善が会議の主要テーマだった。これまでに同じ趣旨の会議がアフリカ、アラブ諸国、欧州、中南米ですでに開かれており、それぞれの地域会議からの提言は、1998年にパリで開かれるユネスコの「高等教育世界会議」の場で最終的にまとめられることになる。
国連大学での会議では、ユネスコに加盟するアジア・太平洋地域各国の代表が作成した行動計画案が採択されたことが最大の成果であった。行動計画は4項目に分かれている。
- 大学の社会的妥当性:アジア各国は自国の大学が社会の期待により応えることを望んでいる。
- 大学の質的内容:アジア各国は各大学が授業のあり方を改善することを望んでいる。これらの国の多くで、大学での指導、学習では暗記が主となっている。暗記法による学習は、製造業を基盤とする経済には役立つものの、創造力と問題解決能力が要求される業務に向いた学生を育てるためには、適した学習法ではない。
- 管理と財務:アジア各国は、各大学が社会のニーズに応える、積極的な経営管理手法を導入するよう要求するとともに、学生数の増大によって大学財政が圧迫されている現状に鑑みて、各大学の学長が資金獲得の才能を発揮することを望んでいる。
- 大学間の協力:アジア各国は、大学卒業生がそれぞれの国の繁栄に寄与する能力を習得できるようにするため、地域の大学がより相互の協力を深め、産業界とも密接な関係を作ることを要求している。
これらはすべて早急な対処が求められる問題ばかりだというのが、会議参加者の一致した見解である。この会議が開かれた結果、アジア・太平洋地域の多くの政府は、自国の大学教育改善に適用しうる各国共通の行動指針を手にできたことになる。これは地域にとって好ましいことだ。以前から国民の教育を真剣に考えてきた国が、現在、もっとも繁栄する経済を享受する国なのだ。そして、それは明日の時代についても言えるのである。