1997年 11月     


指導者は能力と責任感、他者への奉仕の精神を
国連大学国際リーダーシップ・プログラムがスタート

「国連大学の事業はヨルダン政府ならびに国民の大きな誇りである」−−国連大学がヨルダンでスタートさせた初めての指導者養成プログラムについて、フセイン国王はこう語っている。ヨルダンに設立された国連大学国際リーダーシップ・アカデミー(UNU/ILA)では6月末、32日間にわたる第1回のコースが終了した。このコースでは63カ国から163人の指導者候補生が研修を受けた。

世界の将来は政治と実業界をリードする人たちの実力にかかっている。進歩の止まったような国や企業も、その手綱を実力のある指導者が握れば、一気に活性化する。しかし、そのような指導者になるためには、揺るぎない責任感と他者への奉仕の精神が求められる。このアカデミーは、将来の指導者を目指す人材には、世界のもっとも優れた指導者たちと身近に接触し、指導者になるための心構えを養い、リーダーシップそのものについて学ぶための機会を与える。そうした必要性を認識した国連大学が、ヨルダン政府の協力を得て1995年に設立したユニークな研修機関である。

修了式で挨拶したヨルダンのアブドル・サラム・マジャリ首相は、国連大学の元理事会議長で、14年前にリーダーシップ・アカデミーの構想を打ち出した人物である。同首相は、歴史を導き、周囲の状況に支配されない術を研修生に学ばせることが、アカデミーの主要な目的だと述べ、さらにこのプログラムを通じて、研修生が自己の英知と精神力を駆使し、明確な目標に向けて統率力を発揮する能力を培ってほしい、と語った。

式では、アカデミーの諮問委員会議長を務めるヨルダンのヌール王妃が開会の辞を述べ、「21世紀に立ち向かう指導者は、人類のおかれた状況を少しでも良くするために、地球的意識と多様な視点をもつ必要がある。持続的発展、参加型の意志決定、世界平和といったことが、すべて直接的な関連をもつことを正しく認識し、理解する指導者を、世界は求めている」と語った。

研修生たちはコース中、毎日、平均三つの講座に出席することが義務づけられた。講師には各国の首相、外務大臣、議員、あるいは企業のトップといった世界の著名人45人が名を連ね、期間中にイスラエル、パレスチナ、エジプトなどへの6日間の実地研修ツアーも行われた。

「多くの著名な講師から学び、かつ各国から参加した興味ある多才な人材と交流する機会を与えられ、私はとても多くのことが学べた」と、ニュージーランド出身のスー・ル・メスリエールさんは満足そうだ。

研修生のほとんどが、メスリエールさんと同じ感想で、この野心的な試みに感謝していた。だが、一部からは運営とプログラムの実際面で不満の声も聞かれた。「講師がいずれも高位の人物であり、日程が厳しく制限されたため、きめ細かい調整が必要だったのはやむをえない」とアカデミーのアブデル・サフティ・ディレクターも認めている。

また、研修生が163人というのは多すぎるという声も聞かれた。多彩な人材が揃ったグループだけに、個人的ネットワークを広げる機会に恵まれたとはいえ、参加者数は最初に予定されていた75人に限定すべきだったという意見はかなりあった。オーストラリアから参加した研修生のサラ・バランスさんが言うように「要するに、講師との対話の機会がそれだけ減った」ことが不満だった。

とはいえ、リーダーシップそのものに臨機応変はつきもので、ときには妥協も必要なのだ。ある研修生が次のように言っていた。「なにしろリーダーシップ研修としては、これが世界で初めての試みということを考えれば、この種のイベントではよくある運営のささいなマイナスには目をつぶるべきだろう」