1997年 11月     


「平和とガバナンス」「環境と開発」を重点に ファン・ヒンケル新学長が新方針を提示
「継続性を保ちながら変革を」。これは9月1日の国連大学学長交替式で、グルグリーノ・デソウザ氏に代わって学長に就任したハンス・ファン・ヒンケル氏が、大学職員や日本政府関係者らに明らかにした大学運営の基本理念である。新学長は国連大学を世界最高レベルの研究機関に育て上げるために、いま何が求められているかを率直な気持ちをこめて語り、交替式はこれまでとは雰囲気の違う緊張感がただよった。

変革を目指すには、まず基本に立ち戻るべきだとファン・ヒンケル学長は言う。同氏は国連大学憲章に改めて目を通し、そこに新たなヒントを求めると同時に、憲章が国連大学に課しながら、これまで十分に達成できなかった任務にも注目した。すべてを破棄し、まったく新しいものを作ることが新学長の責務ではない。「国連大学の目標と存在意義という二つの重要なポイントは維持して行く」と新学長は言う。

憲章を読み直すかたわら、三人の前任者それぞれが意図したことも、自らつぶさに見直し、彼らがいずれも共通の目標を目指していたことを知った。「どの学長も継続性を保ちつつ変革を目指していたことがわかる。それは私の基本理念とも合致する」。前任者がそれぞれに固有の才能の持ち主であったことも熟知している。初代学長は組織造りに長けた人物であったし、二代目学長はすぐれた倫理観念と哲学の持ち主だった。そして、デソウザ前学長の時代には、次々に国連大学直属の新しい研究研修機関が設けられた。

ファン・ヒンケル学長はこれら三人の意図したことを踏まえて、国連大学の「質」の向上に努めると言う。まず、国連大学の事業の守備範囲を、国連大学だけにしかできない、ないしは国連大学が行えば他機関よりも効果が上がると考えられる事業だけにしぼる。そのために早急に国連大学機構の包括的見直し作業を進め、現在の事業の取捨選択を行う。

「政策志向で独創力のある学者を集めて、いくつかのグループを作り、現在の世界が抱える問題に関して、従来の視点から離れた新しい考え方を創出してもらう。問題は、緊急な対応が必要な地球規模の諸問題に関する、そうした有効な研究成果を各国の政策立案者にどう伝えていくかにある」

アナン国連事務総長はその国連機構改革案のなかで、国連大学に国連のシンクタンクとして真に利用価値のあるアイディアを提供する主導的役割を果たすよう求めている。新学長はこの点について、国連大学は世界中の政策立案者に対して、理性的で目的に合致した政策選択肢を提供する責任を負うと述べ、さらに次のように語った。「国連大学は新しい発展の段階に入った。大学全体が明日に備えなければならない」

国連大学が明日に備えるためには、なにをすべきかの詳細な計画作りはこれからの仕事になるが、とりあえず必要となる事項として以下を挙げた。

  • リストラによって大学としての一体性を強化する。
  • 内部評価グループの提言の内容を実行に移し、それを国連全体の改革策に連携させる。
  • 大学の研究、研修、情報伝達の諸事業を「平和とガバナンス」「環境と開発」の2領域にしぼる。
  • 国連のシンクタンク、あるいは国連諸機関に対する有用なアイディアの提供者としての 国連大学の機能を強化する。
  • 外部資金による事業を増やし、大学財政基盤の多様化と拡大を図る。
  • 日本および世界各国の優れた学術機関との提携関係を構築する。
  • ユネスコ、国連開発計画(UNDP)、ユニセフ、世界保健機関(WHO)などの他の国連機関との密接な協 力関係を強化する。
  • 国連大学の組織としての効率を改善し、財政の透明性を高める。

ファン・ヒンケル学長は就任の挨拶を次のような職員への言葉で結んだ。「国連大学は世界の緊急課題解決に枢要な役割を果たす用意がある。この任務達成のため、全職員一人ひとりのより一層の協力と献身を期待する」