1998年 3月     


欧州での先端技術の導入・開発の先例に聞く
   UNU/INTECHが技術の経済学で検討会議

経済の高度成長を望まない国はなく、そのために各国は特に先端技術の研究開発の促進に懸命になっている。先端技術は長期的な生産性向上の原動力と見なされているため、そうした産業は戦略的価値があると言われるのである。どの国でも技術面で他国を追い越せば、経済的に優位に立てると考えている。

国連大学新技術研究所(UNU/INTECH)は、政策立案の当局者に経済発展における技術の役割を理解させ、若い研究者にその最新の研究成果を発表する機会を与えるため、「欧州における技術政策と遅れた研究開発システム」と題する会議を、昨年10月17,18の両日、スペインのセビリヤで開いた。 多くの貴重な論文、ケーススタディが発表されたが、その中でもアイルランドが技術能力の育成を通じて、経済改革に成功した事例が注目を集めた。

アイルランドはここ1世紀以上にわたって、欧州の他の地域に比べ、経済開発に遅れを取っていた。 しかしこの10年、アイルランドは驚くほどの経済的成功を収めている。ダブリン大学のS・ヘイワード教授は、アイルランドがその技術政策の成功によって、欧州の最貧国のレベルから富裕な国と肩をならべる繁栄を獲得した事情について、詳細な報告を行った。

ヘイワード教授は、アイルランドの歴代政権が外国ハイテク企業の投資を誘致するため、「パートナーシップによるアプローチ」を使ったことを指摘した。これらの誘致企業がアイルランドの経済改革を促進したというのである。デル、富士通、ゲートウェイ、IBM、インテル、モトローラ、その他のコンピューターおよびエレクトロニクス産業の大手企業が次々にアイルランドに工場を建設し、今では欧州で販売されているパソコンの約3分の1はアイルランド製になった。

新しい技術投資は経済の他の分野にも流れ込み、特に食品加工、医薬品、テレマーケティングなどの分野で著しい。ヘイワード教授は「政府のパートナーシップ・アプローチは新技術の誘致に非常な成功を収めた」と言う。

イスラエルも新技術の開発に成功した国の一つだ。テルアビブの学際技術分析予測センターのモティ・ソコロフ氏は、イスラエルで実施されている技術支援システムについて発表した。同氏によると、イスラエルのこのシステムは3つの領域、つまり仲介、投資、諮問サポートに分かれている。さらに同氏はこのシステムによって研究機関や企業のネットワークが生まれ、それが企業の技術開発を支援している事情を述べた。

ソコロフ氏によると、イスラエルの成功には2つの重要な要因がある。一つは技術開発の初期段階から、製品のマーケティングを通じて、企業に総合的なサポートが与えられていることだ。もう一つは自由な企業活動と公共資金の投入が注意深く組合わせられていることである。「地域的な条件によく適応させれば、これらのコンセプトは他の国でも活用できる」とソコロフ氏は言う。 イスラエルの製品サイクル的なアプローチが特に成功したのは、それが技術に投資するだけでなく、投資先をできるだけ集中化したからである。新しい発見は市場で売れる製品に転換するというのが、ここでの原則だった。

英国のグラモーガン大学のディラン・ジョーンズエバンズ教授は、欧州の貧困な地域が直面している最大の課題は、科学的な成果を商業的に成功させる能力が不足していることだと指摘する。その例として、同教授はいくつかのアイルランドの大学での研究成果を挙げた。

「これらのケースからは学ぶべき多くの教訓が得られる」と教授は言う。第一の教訓は正しい環境と支援が得られれば、伝統的な大学でも起業的になれることだ。第二は各地の大学でいま進められている研究は、次のような方法でレベルを高めることができることである。つまり、特許の取れる技術に投資するための報奨制度を研究者に提供する、合弁事業、キャンパス内研究所の設立などによって大学と企業の提携を深める、大学自身が企業を設立する、などの方法が考えられる。これらの方法はすべて、トップクラスの研究者が他に移っていくのを止めるのに役立つ、とジョーンズエバンズ教授は提案する。そして第三のポイントは、大学から企業への技術移転を成功させるには「まず優れた報奨制度、政策、プログラムを整備することだ」と教授は参加者に説いた。