1998年 7月     


UNU Nexions 書評

『飢えているのは誰か。それをどうして知るのか』(Who's Hungry? And How Do We Know?)
ローリー・デローズ、エレン・メッサー、サラ・ミルマン共著
国連大学出版局、英文188ページ、\2,990

ルドウィッヒ・フォイエルバッハは「人間は食べるもので作られる」と言った。たしかに、十分な栄養をとることは、生きる上でのもっとも基本的なニーズであり、権利でもある。それだけに、貧しい人たちにとって飢えることはいちばんの苦しみなのだ。飢えは体力を低下させ、体の組織を破壊する。親たちを絶望に追いやり、幼いこどもたちの命を奪い、障害を与える。飢えはまた、強固な意志という、人間であることのもっとも大切な資質をも打ち砕いてしまう。 表題の通り、本書は飢餓を引き起こす要因をつきとめ、対策の適切な運用のあり方を示すこと、飢餓と判断するうえで通常使われる判定基準を検討することで、そこに入り込む予断を洗い出し、当然現れてくる結論をわかりやすく提示する、という二つの狙いを持っている。
さらに、食糧配分のルールが平常時と緊急時のそれとではどう違うかにも目をくばる。著者らは不足、貧困、収奪という三つのパラメーターを使い、食糧が潤沢に出回っている状況のなかでも、なぜ飢餓が存在するのかを検証する。同じく、食糧が不足していても飢餓を回避する道があることも指摘している。飢餓対策としていつも駆り出される手段を洗い直し、本当に効果があるものだけを勧告している。

『危機の年の国際金融と途上国:1997年の国連討議』(International Finance and Developing Countries in a Year of Crisis: 1997 Discussions at the United Nations)
バリー・ハーマン、クリシュナン・シャルマ共編
国連大学出版局、英文106ページ、\1,490

国連総会では1997年を通じてアジアの通貨危機を頻繁に討議し、それには金融や財界の権威者が加わった。そこで提起されたさまざまな意見を集約したのが本書である。例えば、国際通貨基金(IMF)のミシェル・カムドシュ専務理事は危機から学ぶべき多くの教訓を指摘している。
とくに、現在の逼迫した状況に直接関係する次の四つの課題を取り上げていることが目を引く。

  • 途上国への資金の流れをめぐる政策課題の点検
  • 政府間協議を通じていかに世界経済のガバナンスを強化するか
  • 途上国金融市場を有効かつ自由化された市場にするための必要条件
  • 国際金融問題をめぐり国連内で討議された内容の評価
全体の構成は、投機資金の流れと通貨危機の舞台裏の情報に始まり、財政金融に関する各国政府の政策と国際間の政策協調がどうあるべきかのアセスメントへと続く。後半は、97年通貨危機の時間的経過と金融問題に関して出された国連総会の決議文などの記録である。


『エコリストラクチャリング:持続的開発のための意味合い』(Eco-Restructuring: Implications for Sustainable Development )
ロバート・エアズ、ポール・ウィーバー共編
国連大学出版局、英文417ページ、\4,490

エコロジカル・リストラクチャリング、つまり人間社会の構造を生態系を損なわない形に転換するための新しいパラダイムの条件を明示する論文集。このパラダイムは技術開発や経済活動、そしてライフスタイルなど、すべての転換を求めており、、それが人間の活動を自然がもつシステムに調和させる上で避けられない条件であることを示している。
持続的開発型の工業化パターンを模索する、さまざまな業種や技術分野を個々に分析することを通じて、このパラダイムが描き出される。とくに、商品先物取引市場、燃料の脱炭素化を急ぐエネルギー産業、生態系重視型への技術転換を図る農業、そして運輸産業などに多くのページが割かれている。それらの産業分野や技術領域の現状と主要課題、そして持続性確保のために必要な技術的手段について総合的な評価を下している。
本書は持続的開発がまさに学際的取り組みを要する問題であることを、新しい観点から理解させてくれる。






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