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| | 1998年 7月 |
国連大学新幹部、大学当面の課題について語る
この4月、ラメシュ・タクール教授と鈴木基之教授の二人の副学長と佐藤英夫・学長上級顧問の三人が学術部門のトップとして国連大学に加わった。赴任以来、新幹部は国連大学のあり方をつぶさに再点検し、大学の抱える当面の課題にどう取り組むかについて案を練ってきた。『UNU Nexions』編集部では、それらの課題とそれぞれの抱負について三人に語ってもらった。
タクール教授(写真下)は、「必要最小限の学術的水準を満たすことで、学術機関としての信頼性を維持することが最大の課題」だと語る。国連大学は学術誌、書籍など、印刷物の形で記録に残す価値のある仕事を今以上に実施すべきだと指摘する。「外部の学者たちが国連大学出版局にまず目を向けるようにならなければならない」
その方法として二つの考え方を挙げた。一つは論文著者との出版契約のなかに、出版の第一優先権が国連大学出版局に与えられることを規定することだ。「それには、学者として頭角をあらわすと思われる人物をあらかじめ見極めて、その人物に学究生活の早い時期から投資する必要があるだろう」という。もう一つは、途上国で研究に従事する若手研究者を、各地で開かれる国際的学術会議(たとえば、国際平和研究学会が6月下旬に南アフリカで開催する半年ごとの総会のような)に出席させるため、旅行助成金を支給する案だ。
タクール教授は4月に副学長に就任して以来、次の四つの重要な問題について検討してきた。
- 国連大学が扱うべき研究課題の選定。
- 他の学術機関にない独特の利点を最大限活かして国連大学ができることは何か。
- 他の学術機関の研究をさらに促進するため、国連大学が触媒となれる領域は何か。
- 世界規模の国連機構の中で研究の重複をいかに減らすか。
大きな障害も彼の視野の中にある。「いくつかの制約要素があり、一部は他の国連機関の活動阻害要因と同じ種類のものだ。また大学一般に特有の問題、特に学者の能力を最大限引き出すこと、あるいは彼らの研究成果をいかに現実社会に役立てるか、といった難題も制約に入る」とも指摘した。
鈴木副学長(写真下)は、国連大学は「もっと普通の大学のように機能すべきだ」という。そうなるために、今後二、三年内に国連大学が向かうべき方向を、大学幹部が現在検討中であることを明らかにした。
環境問題担当チームを担当している鈴木教授は、環境危機でもっとも重要な要素は人間だと考えている。「人間の諸活動と環境破壊との関連を国連大学が重視していくようにしたい。多くの大学が環境問題の科学的側面を追求している。国連大学の知的優位は問題の人間的側面に向けるのがもっともふさわしいと思う」という。
特に人間の行動の変化に的を絞るべきだ、という。工業国は技術こそ持続的成長のカギだと主張することをやめるべきなのだ。現状では、貧しい国の環境破壊をくい止めることを願って、富める国から貧しい国へと技術がどんどん輸出されている。
「この考え方を変えて行かなければならない」と彼は指摘する。「環境問題に対して、途上国が自国の実状と文化に即した、彼ら自身の解決策を見出すように促すべきだ」
鈴木教授のもうひとつの悩みは国連大学のイメージの薄さだ。「国連大学のビジビリティをもっと高める必要がある。外部の人たちは、見事な建物だけを見ている。われわれが重要な仕事をしていることをもっと知ってもらうためには、彼らを建物のなかに招き入れなければならない」
鈴木教授はまた、大学の研究成果を社会に広めることも最優先課題のひとつだと指摘する。「国連大学の学術資産はまだ十分ではない」と指摘、会議やシンポジウムを開くだけでなく、研究成果を示すレベルの高い学術出版物をもっと多く出していく必要がある、と示唆した。
それには、世界中の科学者、研究者らとの共同作業がますます必要になる。「私はすでに、日本の各大学の相当数の環境研究者のネットワークを作っている。こうした教授たちの多くが国連大学と一緒に仕事をしたいと思っているが、今この時点ではそうした協力体制を調整する周到な仕組みが存在しない」と鈴木教授は残念がる。
佐藤教授(写真下)も、大学のイメージアップが最優先だという。そして「国連大学のプロファイルを高めるには、内容のしっかりした研究と教育をやるしかない」と指摘した。さらに彼も、国連大学の活動にトップクラスの研究者を参加させるために、世界中の学術社会に彼自身がもつ個人的関係を利用している。 佐藤教授は、ビジビリティが上がれば、資金集めも楽になるという。現在、多忙な仕事の合間に日本の政府機関や各種財団、企業などで働く知人を見つけては、訪問したり電話を掛けたりの毎日だ。「国連大学は、もっとしっかりしたピーアール作戦が必要だ。私自身も、国連大学の仕事をマスコミに売り込んでいくつもりだが、まずその前に、売れる商品が揃っていないと意味がない」
佐藤教授が練り上げたひとつの新商品が、来年早々から大学本部で始まる新しい研修コースだ。人権、平和維持、持続的開発をテーマとする6週間のコースで、修了者には国連大学が修了証書を発行する。
「若い人たちが、国際機関や国際的NGOなどで仕事ができるように訓練するのが、その目的だ。これは、とりわけ日本のように、国連などの国際機関に就職する人が極端に少ない国で、かなり注目されるだろうと考えている」。国連大学がこれまでの研究を通じて得た知識を、社会の実践面の教育に当てはめていく、ひとつの方法であり、また、「普通の大学にはできないタイプの訓練」だと佐藤教授は言う。
さらに同教授は国連大学が、政策立案者に対してより多くの政策選択肢を提示できるようになってほしいと考えていて、次のように語った。「私がブルッキングス研究所にいたころ、研究所が出版する本はどれも、結論として政策選択肢を挙げていた。国連大学の出版物も高度の研究成果と政策提言を併記するようにすべきだろう」。
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