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| | 1998年 7月 |
地熱利用で世界のエネルギー需要に対応 国連大学とアイスランドによる途上国研修
世界の石油市場は近いうちに、急増する途上国の需要に直面し、危機を迎えるおそれがある。パリに本部を置く国際エネルギー機関(IEA)によると、2020年までに世界のエネルギー総消費量に途上国の占める割合は60%に達し、OECD諸国の消費量(30%)を大きく上回ることことになる。先進諸国が予測不能な気象変動の危険に対応して炭酸ガス排出量を制限しても、今後、中国やインドといった国で燃焼される数十億トンの石炭が上乗せされれば、とうてい追いつかない。
こうした事情から、国連大学とアイスランド政府は共同で、地表下に蓄積された熱水を電力に換える技術と、熱水を直接住宅の暖冷房に利用する技術を途上国の技術者に教える研修事業を1979年から継続している。これまでにこのプログラムから200人を超える途上国技術者が巣立っていった。途上国は今後、膨大な量のエネルギーを必要とするが、それらの国が自分たちの土地に眠る地熱資源の利用法を習得すれば、必要とするエネルギーを、もっともクリーンで持続可能な形で入手できるようになる。
アイスランドが大規模な地熱エネルギー利用プロジェクトを実施し始めたのは、首都レイキャビクの地域暖房システムが稼働を開始した1930年代にさかのぼる。いまでは、アイスランドの全住宅の85%が地熱暖房を利用している。アイスランドはさらに、この地熱を活用して産業用の熱源となる高温水蒸気も作っているし、大量の農作物の温室栽培にも上手に利用している。
こうした実績と、この国の地熱利用研究が世界のトップクラスの水準であることを考えると、途上国での地熱エネルギー利用促進のための技術者養成に関しては、アイスランドの科学者、エンジニア、行政担当者など地熱利用の専門家集団が最も精通していると言える。
アイスランド政府との経費共同負担で実施している国連大学地熱研修プログラムは非常にユニークな研修事業と言える。毎年4月から10月までの実地研修で研修生たちは地熱資源開発の技術的側面から環境への影響まで徹底的に教え込まれる。研修生はこの半年間の研修で、地質学的探査技術、ボーリングの地質学、地球物理学的探査技術、ボーリングの地球物理学、熱水貯水工学、蓄熱流体化学、環境影響調査、地熱利用技術、そしてボーリング技術の九つの専門コースの一つを修了する。研修そのものは厳しい内容で、研修生とその母体機関のニーズに合わせて、各研修生のために個別に組まれている。教室や現場では、アイスランドの地熱探査・開発に携わるアイスランド・エネルギー公社の専門技術者が研修生に密着して指導する。
各研修生はかなりの時間を出身国の地熱利用状態に関する各種データの分析に費やす。研究報告書の多くは、そのまま情報の分析・解釈のための指導マニュアルとして利用され、学術専門誌に掲載されたレポートも少なくない。
途上国の各種機関の中核となる専門家群を養成することが、このプログラムの本来の目的である。それが成功していることは、すでにエチオピア、エルサルバドル、ケニア、中国、フィリピンなどの国で、元国連大学フェローたちが国内の地熱利用関係の諸機関で主導的地位を占めている事実が物語っている。これら国連大学研修生OBが今後、これら途上国のエネルギー政策形成に大きな役割を果たして行くはずである。
アイスランド政府はさきに、国連大学地熱研修プログラムに対する年間拠出額を5万ドル増やし、1998年度は55万ドルとすることを決めた。かなりの金額であり、国連大学への各国の一人当たり拠出額では、総人口26万人のアイスランドがトップに立つことになった。
同様の手法を使って漁業管理に関する情報や技術の途上国の専門家を養成する国連大学水産研修プログラムが、やはりアイスランドでこの8月からスタートする。アイスランド近海は世界有数の漁場で、同国の輸出の8割が水産物という漁業国。商業捕鯨再開を主張する数少ない国のひとつでもある。
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