1998年12月    

新しい技術は教育をどう変えるのか
――パリでユネスコ「21世紀の高等教育」会議

連大学は10月始め、ユネスコ主催でパリで開かれた「21世紀における高等教育:ビジョンと行動」会議を中心とする、高等教育に関する一連のイベントに参加した。この会議には115カ国の教育相を始め、4,200人近い政府関係者、専門家、大学教授、議員、学生、産業人が出席、今後の高等教育のあり方を討議した。

会議では5日間にわたってテーマごとの分科会、総会、委員会が開かれ、最後に「世界宣言」と「高等教育の改革と発展のための優先的行動の枠組み」を満場一致で採択した。これらの文書は世界の高等教育を根本的に改革するための基本原則を定めたものと言える。

国連大学高等研究所のタルシシオ・デラセンタ所長は特別パネル「伝統から仮想へ:新情報技術」を司会した。

国連大学高等研究所(UNU/IAS)がユネスコの協力、文部省、日本電信電話株式会社の後援で実施中の「仮想大学プロジェクト」は、インターネットを通じてこの会議の全般にわたる状況を報道した(スピーチやテーマ討議のアーカイブについては、http://vulab.ias.unu.edu/mvc98を参照)。

ユネスコ主催の会議について、このような幅広い報道が行われたのは初めてである。会議報道のプログラムは全部で40時間近くに及んだ。会議の出席者やスピーカーはこの報道を歓迎し、国連大学ブースは大画面スクリーンを見に来る関係者で混雑した。世界中の「仮想出席者」が喜んだのも言うまでもない。2,000人以上がインターネット・サイトを訪れて会議のニュースを読み、電子フォーラムでの討議に参加した。

「新情報技術」パネル討議の際には、UNU/IAS主催の特別分科会がユネスコ会議場と、ブラジル(サンタカテリナ連邦大学)、モロッコ、日本(UNU/ IAS)、米国(カーネーギー・メロン大学)を結んでテレビ会議を開いた。参加者はそれぞれのサイトで他の4ヵ所の状況を見ながら討論を進め、5地点間の多角的交流は大きな成功を収めた。各地からインターネット経由で参加した「仮想参加者」も、仮想教育に使用されるさまざまな形態の情報技術についての情報を提供し、新しいデジタル図書館、遠隔大学院課程、衛星ベースの教育システムなどが紹介された。これらの新しい教育メディアの可能性と限界も討議された。

UNU/IASはまた、新しいレポート「知識へのアクセス:新情報技術と仮想大学の登場」の概要を提出した。これは全世界で展開されている仮想教育に関する各種の新しい技術、教育システム、教育機関や地域の体験をまとめたものである。

国連大学ブースはさらにこの会議で、国連大学本部、および直属の各研究・研修センターなどに関する情報を始め、国連大学の活動を幅広く伝えた。国連大学ブースのディスプレイは大規模な会議の中でも、最も包括的で多くの注目を集めた。IAS仮想大学プロジェクトのパートナーであるNTTや世界中の大学のコンピューター・ソフトウエアがビデオ、PCで展示され、ワイドスクリーンによるインターネットのライブ報道、学術出版物、パンフレットなどの資料に多くの関心が寄せられた。

ファン・ヒンケル学長も討議を司会

10月6日には、ハンス・ファン・ヒンケル国連大学学長が、持続可能性のコンセプトをさらに改善するための大学の新たな役割について、ライブ討議を司会した。この討議では、経済と社会の進歩を地球規模の生命維持システムの保護と調和させるという、高度な目的のために、研究プログラムとカリキュラムを大学外の機関との協力の方向に導く戦略がとり上げられた。

ファン・ヒンケル学長は討議の開始に当たって、三つの基本ルールを挙げた。第一のルールは高等教育を主眼とすること、第二は討議の主題を人間による持続可能な開発に置き、単なる環境に対する関心を超えた議論を進めること、第三は宣言を超えて具体的な行動の開発を目標とすること、である。同学長は討議の方法を説明し、基調講演者を紹介した。

最初の基調講演を行ったのはユネスコのグスタボ・ロペス・オスピナ博士で、新しい課程に持続可能な開発、倫理的な問題、新しい制度構造、教育に対するアプローチを取入れる必要性を強調した。

次の基調講演者のピーター・ヘラー博士(カノパス財団理事長)は1992年のリオ・サミット後における各国政府の活動を紹介し、地域ごとに独自のアジェンダ21を開発し、コミュニティーを基盤とした環境行動計画を市民参加の方式で進めて行くことの重要性を訴えた。

次にコートジボワール・ココディ大学学長のオウオ・アセイポ教授は、全体的で学際的なアプローチと生涯学習の必要性を説いた。同教授はアフリカでの高等教育に関する最近の経験を語り、開放された大学システムの重要性を強調した。

オランダ・オープン・ユニバーシティ学長のR・ファンダム博士は、すべての大学生が環境問題を学び、知識移転を促進することの大切さを訴えた。同博士は複雑な社会状況に対処する力を人々に与え、高等教育課程にグローバルな次元を取り入れる必要性を述べた。こうした方法は人々の専門分野から持続可能な開発への貢献を促進するはずである。

その後、パネリストや一般出席者を交えて討議が行われ、一部からは大学が総合的な知識を必要とすると同時に、専門化しなければならない矛盾についての懸念の声も上がっていた。またコミュニティを基盤とする学習の重要さを訴える声もあった。一方で、各種の学問分野に共通する人間精神の豊かさを説き、それと科学との関係を重視すべきであり、社会の価値観に影響を及ぼし、変革を率先して遂行することを学問の方向とすべきだとの意見もでていた。

論議の後で報告書で提案された6つの主要行動が検討され、聴衆からは新たな提案も行われた。この討議ではユネスコや国連大学が改革を促進し、全世界の大学の協力体制を作って行くために、重要な役割を持っていることが再認識された。