今後の開発での「知識」の重要性を訴える――国連大学学長 第2回アフリカ開発会議で講演 第2回アフリカ開発国際会議(TICADU)が1998年10月19日から21日まで、日本、国連、グローバル・アフリカ同盟の共催で東京で開催されました。アフリカ、アジアの15カ国の国家元首を含む、80カ国以上の代表が出席、小渕首相が開会の挨拶を述べ、コフィー・アナン国連事務総長が基調演説を行いました。 TICADUの主な目的は、国民生活の向上を目指すアフリカ諸国の努力を支援し、サハラ以南諸国の自助努力(オーナーシップ)を通じて平和と安定を促進し、地域外諸国の協力(パートナーシップ)を高めることにあります。 会議では、教育や衛生活動を通じての人的資源の開発、女性の社会参加、農業開発、民間部門の開発などの多くの問題が討議されました。 国連大学のJ・A・ファン・ヒンケル学長は10月20日に、各国代表に対して「アフリカの知識と開発」と題する、次のような講演を行いました。(編集部から) 開発のプロセスでは、もはや資本の蓄積だけがその焦点ではなく、知識の価値がいっそう重要であることを、我々は理解するようになった。知識へのアクセスをもつことが貧しい人々の生活向上に不可欠であることは、世界銀行などの事業が明確に示している。社会のよりよい仕組みを生み出し、より創造的なアイディアを触発する知識は、その意味では資本よりもはるかに大切だと言える。より公平で正しい知識の配分を保障するという意味での知識の共有は、国家間の貧富の差をなくすうえで大きく寄与するはずである。 アジアとアフリカの相互学習というテーマは、東京で開かれてきたアフリカ開発会議のプロセスにとってとくに価値ある知的刺激となった。東アジアの急速な発展の時代と現在の経済危機のいずれからも、我々は重要な政策上の教訓をくみ取ろうとしてきたし、これからもそうし続けるつもりだ。 しかし、アフリカでは、経済政策を整備するだけでは十分とはいえない。アフリカの多くの国では、制度的な欠陥が経済の正常な機能に致命的な障害となっていることを示す多くの事実が存在する。アフリカにおける商業取引きの阻害要因の調査では、条例や政策の事前通告なしの変更、当てにならない法の執行、そして官僚腐敗の影響力などによる被害が浮き彫りにされた。 研究や研修を行うアフリカの機関がきわめて有意義な役割を担うことも指摘したい。この二日間、初等教育が最重要課題であることについて多くの議論がなされ、それは当然といえる。しかし、ある程度のバランスは必要であると私は考える。この点は、10月初旬に開かれたユネスコの世界高等教育会議の結論とも一致する。 どのような商品にしても「知識」より高価ということはありえない。強力な学術社会を自ら維持しないかぎり、アフリカはこれからも外部世界に依存する危険きわまりない状況から抜け出すことはできない。研究と研修を任務とするアフリカ大陸の諸機関は、すくなくとも三つの重要な形で大陸に奉仕できる。アフリカ固有の知識を最大限に活用する、世界に蓄えられた巨大な知識の集積、ならびに常時生み出される研究の成果から必要な知識を引き出し、それをアフリカ特有の条件に合わせて応用する、解決不可能と見える問題を新たな角度から解明することに手を貸す──この三つだ。 「地域別高等研究所」を設けよう アフリカ各国に存在する大学や研究機関をさらに強化して、この任務を達成できるようにする必要がある。しかし、各国の国力の限界を考えると、開発にからむ主要な問題に関する研究と研修を専門に行ういくつかの「地域別高等研究所」を設ける構想が最適の案として浮上する。研究と研修は、政策面と施策面の両方を扱うことになる。 さらに、これらの地域別高等研究所をつなぐネットワークを作り、さらにそれぞれの高等研究所をそれよりひとつ下のレベルから選別した研究機関に結び、レベルの高い機関がそうした下部機関を介して遠隔地の社会的ニーズにより対応しやすくすると、ネットワークは非常に有意義に機能することになる。 ガーナ政府の好意で同国に設けられた国連大学アフリカ天然資源研究所(UNU/INRA)の場合は、アフリカの天然資源の保全、維持、有効活用などに必要な自助能力をアフリカの大学と研究機関が自ら育成するよう支援することが、その基本的任務だ。 第2回アフリカ開発会議の行動計画は非常に包括的なもので、価値のある文書だ。たいへん納得のいく広範囲にわたる提案がなされており、起案者の方々のご努力をねぎらいたい。わたくし個人として、二、三、提案したい。行動計画そのものにではなく、計画を実行に移す際の方法に関して言わせていただく。特定のガイドラインや行動計画すべてに目を通したわけではないが、主な問題領域に関していくつか具体的かつ実施可能な案で簡単に説明したい。 例えば、債務問題を今世紀末までに解決しなければならない、という点だ。アフリカ各国が抱える対外債務の大幅削減で経済成長率が改善されるという考え方には、全く異論はない。債務問題は第1回のアフリカ開発会議でも大いに議論された。しかし、それから5年後のいまも、まだ解決の目途はついていない。 行動計画策定の準備作業のなかで、戦争と混乱がアフリカの持続可能な発展の主たる阻害要因であるという、自明の事実に議論が集中した。この問題を最優先に扱わない場合の人的コストと経済的コストはあまりにも高くつく。この会議として、アフリカ全域に永続的平和がもたらされないかぎり、アフリカの経済成長はゼロにならざるをえない、とする断固たるメッセージを世界に向けて発信すべきだ。 また、いささか明確さに欠けると思われるコンセプトや定義がいくつか目に付いた。例えば、地域協力の必要条件が相互補完性である、という議論だ。相互補完性に欠けると、地域的イニシアティブは競争につながりかねない。この分析をさらに一歩進めてみよう。 例えば、海外からの直接投資誘致に努める前の段階で、資本と頭脳の海外流出に歯止めを掛けるのは、最初の試みではうまくいくかもしれない。 多様かつ多くの側面をもつ大陸というアフリカの特性を考えると、実施段階においても国ごとにより柔軟性をもたせた取り組み方が必要になる。いかなる問題でも、それをもっとも身近に感じる人間がいちばんうまく解決できるものだ。実施プロセスの枠を広げてその他の利害関係者も参加させると、より効果的だと思う。民間研究機関、NGOなど、民間団体をより密接に絡ませることは、実際に必要だろう。 最後に、今年の春、南アフリカのムベキ副大統領が「アフリカのルネッサンス」と題して国連大学本部で講演されたことをご紹介したい。同氏は「新しいことは常にアフリカから始まる」という意味のラテン語の1節で講演を始めた。 経済情勢に改善が見られることは、近年のアフリカで起きている新鮮で歓迎すべき事態のひとつだ。きわめて苦しい状況にあって経済と政治の改革をなし遂げた各国の努力に心から敬意を払いたい。 アフリカの発展は、アフリカ人によってのみできることだ。だからこそ、自らの能力とその育成が大切なのだ。しかし、アフリカは外部世界からもっと支援を得る資格はある。ガーナのローリングズ大統領の言葉を借りれば、アフリカ人は債務と通商の問題でいま以上に協力的かつフェアな扱いをされてしかるべきなのだ。 21世紀のアフリカがより大きな平和と繁栄につながる道を、アフリカ各国と外部世界の国々が選択することを誓う場にこの会議がなることを祈ってやまない。
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