1998年12月    


開発と援助をめぐるアフリカの声を聞く──アフリカ開発会議に国連大学の貢献
2回アフリカ開発会議(TICADU)が10月19日から21日まで東京で開催され、アフリカが開発を進める上で直面するさまざまな問題が討議された。国連大学はTICADUの討議の準備として、アフリカ経済研究コンソーシアム(AERC)との共催で三つの準備イベントを開いた。

まず国連大学本部では8月3、4の両日、「世界経済におけるアジア・アフリカ」会議を開いた。この会議はアフリカおよび東南アジアと世界経済との関係を体系的に比較し、アフリカ諸国に対して外部との関係を強化、改善する方法を提案することを目的としたものであった。

さらに国連大学本部ではTICADUの前週にあたる10月14、15の両日、専門家による非公開ワークショップが開かれ、制度面から見たアフリカ開発の主要な課題についての最近の研究が紹介された。続いて10月16日には、公開フォーラム「21世紀におけるアフリカ開発」が開かれた。このフォーラムには、多数の外交官、政府職員、学生、市民、報道関係者が参加、約20人の学者、政府幹部が提出したレポートをめぐって討議が行われた。貧困を緩和し、世界経済へのアフリカの参加を促進し、アフリカ社会を再活性化する、などの緊急な課題が取り上げられた。このフォーラムは参加者にとって、アフリカの政策責任者や学者、世界銀行、アフリカ開発銀行の幹部から直接に意見を聞き、質問する貴重な機会であったと言える。

援助の効果を高める

8月の「世界経済におけるアジア・アフリカ」会議では、対照的な意見が目立った。特にアジア開発銀行のハイデル・カーン氏と、タンザニアの経済社会研究財団のサム・ワングウェ氏の意見が注目を集めた。

カーン、ワングウェ両氏とも援助の効果を高める必要性を説いた。両氏の視点はやや違っていたが、いずれも途上国が長期的に法律、社会の制度面を改善し、教育水準を高めて、援助の効果を上げる必要性を訴えて注目された。カーン氏は東南アジアでの経験から、「ポイントはアカウンタビリティ(説明責任)にある。援助で何が行われたのか、開発プログラムの中での配分は効果的だったのかを、まず明らかにすべきだ」という。

もっとも、援助の効果を厳密に測定するのは難しい。途上国の社会では、「官僚に完全に合理的な行動を期待することは難しく、官僚との対話では<限定された合理性>を期待するしかない」からだ。

一方、カーン氏はすべての途上国で中等教育の相対的な弱さが目立つという。そのために能力育成が大きな障害に直面している。それだけに援助の長期的効果としては、有望な領域の一つでもある。 同氏は「大事な結論は、援助が与える方も受け取る方も官僚の利益になっていることだ」と述べる。従って戦略的ビジョンを立てるためには、長期的に法律的、社会的な制度を整備することが必要なのである。

「援助中毒」のジレンマ

タンザニアのサム・ワングウェ氏は援助の多くを受け取っているアフリカ諸国について、別の視点を示していた。同氏は貿易や投資と並んで、援助はアフリカを世界経済と結ぶ重要な三つのきずなの一つである、と言う。だがサハラ以南の経済的転換の道程の中でも、過去10年ほどの流れは必ずしも明確ではない。

カーン氏が述べたように、インドネシアのような国でも、最近まで安定と着実な石油収入を得ていながら、ベネディクト・アンダーソンの言葉を借りれば、「援助中毒」症候群を患っていたことが分かった。

ワングウェ氏は「援助が効果を上げるのは、被援助国の政策的環境によって補われる場合に限られる」と見ている。残念なことに、多くのアフリカ諸国では、政策的環境が整っていないことが、援助の努力を阻害している。

10月16日の公開フォーラムで、ファン・ヒンケル国連大学学長は基調講演を行ったマラウイのカシム・チルンファ蔵相を歓迎した。
同氏は政策的環境には次の四つのポイントがあると言う。

  • マクロ経済的環境は非常に重要である。政治的な不安定は援助の効果を減殺するからだ。この点については、財政が黒字なのか赤字なのか、インフレ率、国際的関係での開放の程度などの指標を監視する必要がある。
  • 「約束能力」が重要である。援助を受け取る側はとかく、実績に基づいた契約取決めよりも、援助が継続して流れることを重視する。同氏はこの点について「金をくれるだけでいい。よけいなことを聞くな」という姿勢だと言う。
  • 援助関係自体がすでに時代遅れまたは革新性に乏しい政策になっている。アフリカでは歴史的に、積極的なのは援助国で、被援助国はとかく受け身だった。
  • 最後に、「援助問題を誰が管轄するのかが明らかでない」とワングウェ氏は言う。それは教育水準が低く、他の能力育成の努力が十分でなかったからだ。
同氏はさらに、アフリカ諸国の債務の大きさについて指摘し、これが援助の効果を阻害していると語った。特にサハラ以南の諸国では、他の地域以上に対外債務が増加している。  この地域は外国援助を返済する資源が特に不足しており、債務の利払い費用が輸出額の40%に達している国もあるという。

こうした困難な問題はある程度検討されているが、解決の方向はまだ見出されていない。そして問題の先送りで債務問題はさらに悪化する傾向にある。