1998年12月    


国連大学が気候変動サミットで指導者へ提言
4回国連気候変動枠組条約締結国会議、いわゆる「地球温暖化防止会議」(COP4)が11月2日から13日までアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた。国連大学はオブザーバー機関として、さまざまな催しを通じて会議に積極的に参加し、国際的な経済システムと、前回京都で開かれたCOP3で採択された京都議定書との対立点に関して問題提起を行った。

国連大学高等研究所(UNU/IAS)と国連大学地球環境パートナーシッププラザ(GEIC)は11月7日、共同でまず最初のフォーラムを開催した。このフォーラムではブラドニー・チェンバース(UNU/IAS)とジェリー・ベラスケス(GEIC)両氏が司会し、貿易と環境問題の専門家3人が意見を述べた。

上智大学法学部のフルブライト留学生であるローラ・キャンベルさんは、温暖化防止条約とWTO(世界貿易機構)との間で意見が異なると予想される問題領域を示し、温暖化防止についての交渉の中で、各国政府がこれらの点に留意して交渉を進めるように呼びかけた。

エール大学環境法・政策センターのダニエル・エスティー所長は、気候変動条約が一次産品の価格構造に間接的に及ぼす影響について取り上げ、それが京都議定書実施のためのメカニズム設定に当たって「効力を削減する効果」をもたらす可能性があるため、対策が必要だと指摘した。エスティー氏は、貿易を「執行ツール」に使用するべきだと主張し、条約締結国すべてが参加する多層構造の強制システムが必要だと述べた。

英国FIELDのジェイコブ・ワークスマン理事は、投資に関する多国間協定の交渉経過について報告し、京都議定書の実施段階で予想される対立点を説明した。

11月11日には、京都議定書とそれ以外の多国間協定とのリンケージに関する国連大学レポートを中心とした、2回目のフォーラムを開催し、チェンバース、キャンベルの両氏が、国際法と国際政治の観点から京都議定書を論じた。

COP4では、上記の国連大学レポート「グローバル気候ガバナンス:京都議定書とその他多国間協定とのリンケージに関するレポート」(Global Climate Governance: A Report on the Inter-linkages between the Kyoto Protocol and other Multilateral Regimes)(英文)が約1,500人の会議出席者に配布された。このレポートの全文は以下の国連大学地球環境パートナーシッププラザのホームページに掲載されている(http://www.geic.or.jp/ climgov/index.html)。

国連大学ではこのほか、会期中、展示会場にブースを設け、環境問題関連の国連大学出版物、研究論文などを展示した。

国連大学高等研究所の研究員らは会期中、COP4の各国代表らのアンケート調査も行った。COP4へ向けた各国の準備作業、交渉の経緯に関する各国の受け止め方、代表団の規模と専門知識などの事項に関して意見を聞いた。60人の代表から回答が寄せられ、その結果は高等研究所の「環境と多国間外交」プロジェクトの研究会シリーズの教材の開発に役立てる予定。

会議は土曜の早朝、京都議定書に盛り込まれた主要メカニズム(共同実施、廃棄量取引、クリーン開発のメカニズムなど)に関する仕上げ作業の期限を設定した「ブエノスアイレス行動計画」の採択で幕を閉じた。次回の気候変動条約締結国会議(COP5)は1999年開催の予定。

難問、地球の気候ガバナンスに取り組む――国連大学がワークショップ開催


「気候変動に関する政策の未来シナリオ」と題して、気候変動に関する1997年京都議定書の法的、経済的、社会的影響について討議するワークショップが、国連大学、国連大学高等研究所(UNU/IAS)、地球環境パートナーシッププラザ(GEIC)共催で9月17、18の両日、国連大学本部で開かれた。  会議の目的は、11月のブエノスアイレスでの第4回地球温暖化防止条約締結国会議(COP4)の締約国政府に、事前に提示する政策提言をまとめることにあった。1997年12月に採択された京都議定書の実施進展状況と、議定書の目標達成にさらに必要となる活動計画の検討を進めている各国に、考察のための新たな資料を提供することが、この会のそもそものねらいだった。
 京都議定書には、気候変動を防ぐ温暖化防止条約の最終目標をマーケット・ベースで達成することを意図した「柔軟メカニズム」と呼ばれる一連の方策が盛り込まれている。
 議定書の柔軟メカニズムの中でとくに重要な規定は以下に関するものである。1)温室効果ガス排出量の取引、2)排出量削減のため国家間で行われる共同実施、3)クリーン開発メカニズム(開発途上国における気候変動防止活動を支援する計画)。
 これらの柔軟メカニズムのいずれについても、その運用の原則、規定、指針などの細目はまだ決まっておらず、各国政府間で実施の具体的要目について折衝が続いている。このこともCOP4の焦点のひとつだった。
 柔軟メカニズムを実際に運用する上での斬新な政策オプションを打ち出すことが、国連大学とGEICが共同でこの作業に着手した主要目的のひとつだった。そのため、9月のワークショップでは、柔軟メカニズムの効果的運用で民間部門が果たすべき役割、順守と強制のための強力なメカニズム、国際貿易と投資と京都議定書をリンクする仕組み、気候変動議定書とそれ以外の環境関連の条約等との関係、共同実施スキームとクリーン開発メカニズムのもとで気候変動防止活動を展開するための、規範的ルールの作成などについて集中した討議が行われた。
 地球気候の制御のための未来シナリオの設定で、温暖化防止条約の一つの執行手段としての温室効果ガス排出量取引に条約の重点が置かれていることから、専門家はこの条約と国際貿易との間に将来、摩擦が生じる可能性を指摘している。また、京都議定書の規定では、エネルギー効率のよいプロジェクトを途上国で実施するよう先進国に奨励しているが、そのことと国際的な投資慣行との関係も、大きな議題のひとつだった。議定書の効果的実施の面で民間部門のもつ死活的重要性と気候変動に関係する経済活動を管理する、矛盾のないルールの必要性についても検討された。
 会議の出席者らは、国連大学がGEICと高等研究所を仲介にして、京都議定書実施のための有効なメカニズム作りにおいて、きわめて重要な役割を担うとする結論に達した。とくに国連大学に望まれる活動として、気候変動防止における民間部門の役割などの戦略的領域に関する研究、貿易と投資と気候変動との関連性の研究、順守と強制についての考察、政策立案者ならびに国連を構成する各国政府とその他の団体へ向けた革新的政策シナリオと解決策を盛り込んだ検討資料の作成などが挙げられた。