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この記事は、日刊工業新聞の許可を得て転載しています。


日刊工業新聞 第2部地球環境特集



国連大学・安井至副学長
「地球の限界認知し活動を」

―国連大学(UNU)は環境の持続可能な発展へのプログラムを展開しています。
「地球資源と人間生活とのマッチングをいかにマネジメントすべきかがテーマ。地球には限界がある。この簡単明瞭なことが認知されていない」

―技術の発展とエネルギー問題の解決は。
「技術発展の可能性は無限。しかし、技術だけでエネ問題は解決できない。ニーズがあれば技術は開発される。しかし、技術には限界があることも認識しないと。21世紀は技術の限界を認識し、そして行動する二つの姿になる」 「米国は非常によく認識しているが、行動しない。日本は米国よりましだが、十分に行動していない。10年、30年、100年、300年後がどうなっているかを今、我々人類はやっと語れるまできた。300年後でも、化石燃料を大切に使えば限界ではないだろうが、大切に使わないと150年後が限界かも。限界をまじめに議論すれば、今の貧困や人口増加問題、経済問題は無視できなくなる」

―環境悪化で厳しい事態に直面しないと動かないのも人類かも。
「300年後に太陽と地球の関係は変わってはいない。その中で、持続可能な生活を人類が営むことができる地球となるには、人口を30億人(現在は54億人)まで減少させることだ。30億人までは2100年では到底下がらない。(気候変動による大災害や戦争など)悲劇的な形で人口が急落するのを回避して、人口をじわじわ落としていくことが大切」

―発展途上国の所得を増やし、人口を抑制していくのですか。
「世界が社会インフラ(上下水道)を何とか整備し、子供が大学を出るレベルまで所得が高まれば、出生率はあっという間にダウンする。GDPが3000ドルまでいけば、平均寿命は70歳までいく。途上国をそこまで発展させ、地球の限界、能力の限界を認知し、300年後のシナリオを描かないと」

―産業革命から今までは何も変わっていない。
「産業革命は寒冷化に伴う森林の枯渇が背景にあり、化石燃料(石炭)に切り替わった。それ以来今日に至るまで、米国も思想的には産業革命の延長ができた。今後は地球の限界を認知し地球適合型活動をしていかなければ。このため、よってたかってほめる社会をつくらなければいけない」

―エコ商品を積極的に購入するエコプレミアムクラブを結成しました。
「自分のライフスタイルを相手に自慢し、喜ぶ会だ。ポイント制にし、ガソリン車をハイブリッドカーに替えたら何点といった具合に、環境に貢献する商品を導入することでポイントが上がり、級が上がるたびに会費を払うといった帰属的サークル。どこへ金を使い、その結果を皆で自慢しあい、経済も持続的な発展をしていく」

―循環社会構築のベースとなる法律がすべて施行されました。
「その中で、容器包装リサイクル法はすごく重要な役割を果たした。環境負荷で容器は大したことはないが、誰もが使うためリサイクルでは国のポリシーを感じる。容リ法は全国で異なるゴミの分別ともからんでくる。市民も巻き込んだ最適で美しいシステムになることを期待している」

―京都議定書が発効しました。
「国のスタンスとして環境税は必要だ。それくらい大きな問題だと国民に発信しなければ。少額の環境税にして、エコプレミアム商品の開発にだけ税を使うといったことも考えてもいい。設計に開発費が流れることで、素材にまで行きわたり、国際競争力を高める結果ともなる。日本は京都議定書での削減枠を達成するため実行しようとしている排出量取引では、CDM(クリーン開発メカニズム)だけにして、達成できなかったら繰り越すことだ。そこまで追い込まれないと日本人は覚醒しないだろう」

―液体燃料から、21世紀はガスの時代とも。 
「これからは水素の時代とばかり、気体へ置き換えるのは難しい。石炭は炭素を利用して人造石油にした方がいい。水の電気分解で水素を得るよりも電気はそのまま使い、電気が余れば水素を作り、その水素は炭素と合成して人口油を製造した方がメリットは大。エネルギーの究極は太陽光で、次いで地熱だろう。地中熱や下水熱、ヒートポンプ技術も有望で、もっと磨く必要がある。熱工学の時代はしばらく続く」
(編集委員・駒橋徐)



京都市・松井珍男子(いずひこ副市長
「温暖化対策は京都から発信」

―04年12月、自治体としては初めての温暖化対策条例「京都市地球温暖化対策条例」が議決されました。条例の特徴は。
「まず、2010年までに90年比で温室効果ガス10%削減の目標を条例の本文に明記し、市民や事業者だけでなく、本市を訪れる観光客にも協力を義務づけている」 「二つ目に、最大の排出源となる事業者対策として、年間の電力使用量600万キロワットアワー、原油換算で燃料使用量1500キロリットル以上の大規模事業者には削減計画書の提出、排出状況の報告を義務づける。市内2万の事業者のうち、最大で500―600社程度が当てはまると見ている」 「三つ目は、その対応を義務づける対象の規模を”事業所“でなく”事業者“単位にしたこと。例えば、大手コンビニエンスストアチェーンなどは、店舗それぞれのエネルギー消費量が基準値を超えなくても、チェーン全体を合計すれば超える場合に適用される」 「四つ目は延べ床面積が2000平方メートル以上の建築物の新築についても削減計画の提出を義務づけること。必然的に、新築される大規模建築物のほとんどは省エネ建築物になる。大型マンションを含め年間100―200件の新築があるため、相当の効果が期待できる」

―現段階では規制、罰則がほぼありませんが。
「実は”規制を盛りこむべき“という意見もあったが、いきなり強く規制するのではなく、まず事業者の自主的な取り組みを求めることとした。そして、本条例は”進化する条例“。3年ごとの見直しを規定している。08年度の見直しに向けて点検・評価を進め、必要があれば改正する可能性はある」

―現在の京都市の温室効果ガスの排出状況および90年比10%の削減目標は達成可能ですか。
「本市の温室効果ガスの排出状況は基準年の90年が805万トン、直近の値は01年の798万トンでほぼ横ばいだ。省エネと産業構造の変化によって工場からの排出は大幅に減った一方で、運輸業の活発化やOA製品の普及という増加要因もある。10%削減という数字については事業者、市民、観光客の皆さんの協力が必要だが、十分達成可能だと考えている」

―条例のほかにもバイオディーゼル燃料(BDF)化事業が活発です。
「昨年6月、BDF精製プラント”廃食用油燃料化施設“が完成した。現在は市バス95台、そして全ゴミ収集車約220台がBDFを使って走っている。原料となる市民からの廃食用油の回収拠点も、現在の855拠点から2010年には1500拠点へ増やし、さらに循環を強化する」

―地球環境問題に自治体として貢献するには、どうするべきですか。
「自治体として環境問題に取り組むには、首長が確たる意志を持って推進していくことが絶対に必要だ。予算もいるし、人も必要。体制を整えることはそう簡単ではない。本市では桝本頼兼市長が率先して意識改革を行っている。そうしたことも理解されて、本条例も全会派一致で議決できた」

―これからの地球温暖化対策事業は。
「京都議定書が発効するこの時期に、本条例の議決、施行を実現できたことを喜んでいる。我々の地球温暖化対策への取り組みは小さな島国の、そのまた小さな都市の小さな歩み。しかし、着実にこの歩みを進めていきたいと考えている。幸い、本市には先進的取り組みを実行してくれる企業、知恵を出してくれる大学、積極的に活動していただける市民と市民団体の3者がそろっており、恵まれている。京都モデルを世界へどんどん発信していきたい」
(京都・深江隆寿)



リコー・酒井清常務
「製品の環境性追求続く」

―京都議定書が発効しました。リコーグループとしては、温暖化対策に向け注力することは何でしょうか。
「当社では2010年度までに国内の二酸化炭素(CO2)排出量を90年比12%削減しようという厳しい目標を掲げている。そのためには工場やオフィスといった各事業所ごとに、CO2削減に向けた目標設定を行っている。京都メカニズムで認められているCDMなどの活用も視野に入れている。ただ、CDMの活用はあくまでも、目標を達成するための保険的な措置であって、最優先することは本業を通じた環境負荷低減を実行すること。その際、重要になってくるのは生産プロセスの革新や技術的な側面といえる。省エネ型の生産技術の追求はもちろんのこと、製品面でも今以上の省エネ、環境配慮性を追求したい」

―複写機なども省エネ化が年々進んでいます。
「当社では以前から複写機などの商品群で省エネ技術の研究に注力して高い成果を上げてきている。例えば、待機時の消費電力を削減する独自技術を開発するなどして、実際に製品への適用を広げている。複写機などを以前と比べると、実際に全製品群で消費電力は半分以下に減少している。ただ、今後も一層の省エネ化の余地はあると考えている。具体的には、待機時や起動時の消費電力削減だけでなく、稼働時の消費電力の低減化などもあげられる。その一方で材料の軽量化やリサイクル材の適用拡大、石油資源枯渇対策としてのバイオプラスチック適用などにも意欲的に取り組んでいきたい」

―04年度は中期の環境行動計画の最終年度でしたが、具体的な成果は。
「全社員に対して環境や省エネに対する意識が徹底され、広く普及浸透してきたことが挙げられる。当社では以前から環境行動計画を策定し実行してきたが、こうした積み重ねが、現在の社員の環境意識の高さにつながっている。一方で、例えば、どの場所に、どの程度の投資を行えば、成果が得られるかといったことも、これまで環境経営に注力してきた経験から把握できている。現在、05年度からの新しい環境行動計画を策定しているが、CO2排出量の削減目標のみならず以前から行ってきた環境配慮型の技術開発を促進するための具体的な数値目標なども織り交ぜていきたい」

―地球温暖化などの環境問題をどのようにとらえていますか。
「温暖化の問題はもちろんだが、企業として取り組むべきことは多い。事業活動CO2排出量削減に貢献することも最重要となるが、それと並行して製品における有害物質排除やゼロエミッションなど、環境活動といっても多岐にわたる。当社でも以前から『環境保全と利益創出の同時実現』という環境経営のコンセプトを提唱して、経営の柱として環境を重視している。とはいえ、企業は『環境に悪いことをしている』といったイメージを抱く人もいるが、実際には真剣に取り組んでいる企業が多い。われわれが生産工場で実行しているゼロエミ活動での精度の高いゴミの分別などは、日常生活でも大いに参考になる。また、省エネや環境配慮型の社会を実現するために、多くの側面でインフラを社会に対して提供していくのも産業界の役割といえる」
(千葉龍太)



横浜市・中田宏市長
「ゴミ削減へG30運動を推進」

―京都議定書が発効されました。わが国には、温室効果ガスを6%削減するという目標があります。
「地球温暖化問題については、多くの人々が緊張感を持っていないのが実情だ。例えば、テレビのニュースや天気予報で異常気象の発生などを見て初めて、何となく温暖化対策の必要性を感じる人が多いのではないか。温暖化対策を考える上で、京都議定書という枠組みがあるのは有効だ」 「枠組みを持つことが重要なのは、横浜市の財政状況に対する考えにもあてはまる。横浜市では、中期財政ビジョンを策定。財政再建のため、市債発行残高を前年度比8%減にする目標を立てて実行に移している。温暖化対策も6%減という目標があることによって、行動がしやすくなる」

―横浜市は人口356万人で欧州の一国並みの規模を持っています。温暖化対策でも、課せられた責務は大きいものがあります。
「横浜市独自の枠組みとして、『横浜市地球温暖化対策地域推進計画』を策定した。2010年度における市民一人当たりの温室効果ガスの排出量を、90年度比で6%以上削減するという目標を設定している。目標達成に向けて、市民と事業者が一丸となって、ゴミの減量化や工場・ビルでの省エネ活動などに取り組んでいる」

―具体的な活動は何を行っていますか。
「横浜市では02年から、6月の夏至の日から9月の秋分の日までの約3カ月間、市庁舎の冷房温度を28度Cに設定し、市職員をはじめ来庁者に軽装を奨励するノーネクタイ運動を行っている。3年間やって県内の自治体や団体で定着し始めた。市内企業にも広がりを見せ始めている」 「04年には東京、神奈川、千葉など首都圏の自治体で構成する八都県市サミットでも、同運動を提案した。ビジネスの慣習では、夏でも上着を着てネクタイの着用が義務づけられている。服装にしても制度にしても、社会通念上の価値判断を変えていかなければならない。そのため、ノーネクタイ運動を日本の中枢である”霞が関“にも広げていきたい」

―横浜市のG30運動が話題になっています。地方自治体のゴミ減量運動でスローガン的なものは多いが、具体的な数値目標を掲げる例は珍しいです。
「G30運動とは、2010年度のゴミ排出量を01年度実績に比べて30%削減する運動。ゴミと資源の分別を徹底することによって、ゴミを減らす意識を市民にも持ってもらっている。05年4月からは分別品目数を拡大する。古紙や缶、ビン、ペットボトルなど10分別15品目に細かく分けてゴミを出すようにしていく。G30運動は全市民が参加できる地球温暖化対策といえる」 「ただ、ゴミを減らすのは、手段であって目的ではない。市民にもゴミを減らしていく延長線上に、地球温暖化防止という目的を持ってほしい」

―産業界では環境税の創設に関し、反対の意見が多いようですか。
「地球温暖化防止のために、財源を何に使うか。使途が一番の問題となる。環境税を環境のための目的税化することが必要だ。環境と経済の双方の成長と発展のためにも、財源を環境対策のための技術開発に使うことがよいのではないか。環境税の財源を、低燃費自動車やクリーンカー、省エネ家電製品などの研究開発費に注ぎ込むべきだ。日本の自動車メーカーや家電メーカーが環境対応に努力することによって技術力が向上すれば、わが国の国際競争力も高まる。使途を明確にすれば、企業側の理解や納得も得られると思う」
(横浜・川瀬治)

2005年2月22日付け / 日刊工業新聞