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この記事は、読売新聞より許可を得て転載しています。

防災世界会議
水災害を減らすため数値目標の設定を

編集委員 浅羽雅晴

 神戸で始まった「国連防災世界会議」では、水災害の被害を減少させる具体的な数値目標が必要だ。(編集委員 浅羽雅晴)


 今回の世界会議は、阪神大震災から十年を機に、二十一世紀の新たな防災戦略を話し合う場となる。昨年十二月のインド洋大津波が死者、行方不明者約十八万人の大災害に発展したことから、水災害対策への関心が高まり、急きょ閣僚級の参加者が増えた。

 世界各国の洪水による被災者は一九九〇年以降急増し、その90%以上をアジアが占める。原因は、気候変動による集中豪雨が増加しているほか、途上国では河川沿いの低湿地帯に居住者が集中する国土構造のためだ。

 甚大な洪水被害は、途上国に感染症や貧困の拡大をもたらし、社会の不安定要因にもなる。最終的にはテロの温床にもなりかねない。貧困対策や水不足解消は、国連のミレニアム開発目標などに盛り込まれているものの、洪水、津波など水災害対策の国際合意がなされたことはない。

 その背景には、洪水災害は突発的に発生するので予測がつきにくいとの先入観がある。また、巨額の援助費を巡り先進国と途上国間で折り合いがつかないことや、欧米社会が水不足問題には熱心でも洪水問題には関心が低いこともある。

 だが、水害は地震と比べれば、予測が可能だ。気象衛星や地上観測網で豪雨の可能性をとらえ、早期に警報を出し下流の洪水を予知することは日本も試みている。地震に伴う津波も、到達までの時間差を利用して避難はできる余地がある。これを生かすためには、住民の防災意識の啓発、教育、訓練が欠かせない。

 国連大学・環境と人間の安全保障研究所は、洪水予測など事前対策費が災害後の救済費の約1%しかなく、「予防策中心に切り替えないと被害の拡大は避けられない」と警告する。

 サイクロン(暴風雨)に度々襲われるバングラデシュでは、九一年に死者十三万余人を出したが、九七年の同規模の襲来では死者百三十四人に激減できた。日本を中心とする国際協力で小学校を利用した避難施設を千三百棟建て、洪水予報のための河川データの遠隔測定装置を導入し、防災意識を高めた成果だった。

 昨年十二月に開かれた「国連・水と衛生に関する諮問委員会」(議長・橋本竜太郎元首相)が、「水災害の死者を二〇一五年までに半減させる必要がある」とアナン国連事務総長に答申した。インド洋津波発生前の会議ではあったが、この目標こそ神戸で合意すべき緊急の課題だろう。

 今回の国際会議を抽象的な決意表明で飾るお祭り騒ぎに終わらせてはいけない。今後の水災害対策への確かな道筋付けが急がれる。同会議のホスト国であり、災害体験で豊富な事例を持つ日本の指導力が強く問われている。  

2005年1月19日 /読売新聞(朝刊)第13面(論説)面