能力育成:大学院研修



 国連大学の大学院レベルの研修プログラムは、三つの目的を持っている。第一は途上国の研究機関の機能を強化し、研究の水準を引き上げるとともに、若手の研究者に研修の機会を提供することである。第二の目的は、途上国がしばしば直面する学界の中での知的な孤立からの脱却を支援することである。第三は国連大学の地球規模の研究網の展開を促進することである。

 1976年に国連大学の研修生制度(フェローシップ)が開始されて以来、1,600名にのぼるフェローが研修を修了した。1997年には、70名が研修を終え、104名の新フェローが研修を開始した。

 国連大学は1997年に次のフェローシップを提供した。


 国連大学は毎年開催している「グローバル・セミナー」シリーズを、今年は日本国内の2ヵ所(9月に神奈川県湘南国際村、10月に神戸市)で開催した。これらのセミナーは主として日本の学生を対象に、国連大学のグローバルな専門家ネットワークとの積極的な交流を通じて、国際的な意識を高めることを意図したものである。留学生を含む約140名が参加した。セミナーの「湘南セッション」は財団法人かながわ学術研究交流財団と9大学(青山学院大学、慶応義塾大学、国際大学、国際基督教大学、中央大学、津田塾大学、東海大学、東京大学、早稲田大学)の協力で開催され、「神戸セッション」は神戸大学、大阪大学、京都大学の協力を得て、財団法人神戸国際交流協会との共催で開かれた。

 UNU/WIDERは1997年にヘルシンキ大学およびヘルシンキ経済・経営管理大学院で、経済発展と移行経済の研修コースを実施した。いずれのコースもUNU/WIDERの学術スタッフが担当し、経済概念および理論についての学生の知識に貢献した。

 UNU/WIDERは3月からその年次講演シリーズを開始し、最初は1993年ノーベル経済学賞の受賞者、ダグラス・ノース氏が「移行問題の理解に対する新しい制度経済学の貢献」と題する講演を行った。講師は途上国または移行国の若い学者の中から、UNU/WIDERの研究プログラムに関係するテーマの研究に従事している者を研修生に指名することができる。今回のフェローシップはノース博士の下で働いている中国の経済学者に与えられた。

 UNU/WIDERはその公開講演シリーズを引き続き実施した。UNU/WIDERの学術スタッフ、フィンランドの学者および国際的な客員研究員が、同研究所の主なテーマに関係する6回の講演を行った。

 UNU/WIDERはまた、若い博士課程学生のために9ヵ月のインターンシップ・プログラムを実施した。フィンランドから3人、フランスとガーナから各1人の学生が参加した。インターンはプロジェクトの研究員に密接に協力し、少なくとも1本の研究論文を書くことになっている。

 東京のUNU/IASの大学院教育プログラムはまた、持続可能な開発のためのエコリストラクチャリング、メガシティーと都市開発、多国間主義とガバナンスの3領域のテーマによる、博士号フェローシップと短期研修コースを実施した。研修生は東京でUNU/IASの学術スタッフやUNU/IASネットワークの学者の指導の下で、研修を受けた。研修生は数人ずつ6つから8つのチームに分かれ、日本人の指導教授、客員研究員、国連大学学術スタッフと協力して研究を進め、修了後、各自のテーマについて論文を提出した。1997年には14ヵ国から18人の博士課程研修生がこのプログラムに参加した。

 UNU/IASはまた以下の短期研修コースを実施した。

 マーストリヒトのUNU/INTECHでは1997年、2人のインターンが同研修所博士課程インターンシップ制度の下で学んだ。またUNU/INTECH−MERIT合同プログラムの一部として、11人の学生が研修を受けた。このプログラムのため、UNU/INTECHは成績優良な途上国の学生に対し、奨学金の支給、授業料の免除、医療保険の給付等の支援を行っている。

 1997年中にマカオのUNU/IISTで研修を受けたフェローは17ヵ国から47人に上った。彼らはUNU/IISTのプロジェクトに参加し、それを通じて以下の研修を受けた。

 第一は研究研修で、研修生はソフトウエア技術研究に参加し、フェローシップの期間中に科学論文を作成し、学術雑誌等に提出する。第二は開発研修で、研修生は高度なソフトウエア開発研究に参加する。第三はカリキュラム開発で、その目的は各大学の大学院および博士課程後のソフト技術カリキュラムの開発を支援することにある。UNU/IISTは途上国の教授や講師を招き、3ヵ月から6ヵ月のフェローシップで各自のコースのカリキュラムや教材を作成させている。フェローシップの修了後、必要なソフトウエアとともに研修中に作成された教材を持ち帰り、各自の大学での教育に役立てることになる。

 UNU/IISTはこの他にも、この1年間に下記のソフト技術研修コースを実施した。

 UNU/IISTはマカオ大学ソフトウエア工学プログラムとの協力を、講義と理学修士論文指導を通じて継続している。1997年第1四半期に、7人のUNU/IISTスタッフによって週単位のコンピューター科学セミナーを、13週にわたって開いた。UNU/IISTスタッフは1997-98年の1学期に、毎週3コースのソフトウエア工学の講義を理学修士課程の学生に対して行った。

 カナダ・オンタリオ州のUNU/INWEHは1997年に流域管理に関する研修カリキュラムについて、二つの監視関連活動を開始した。一つはUNEPとWHOとの協定が成立し、グローバルなGEMS/WATERプログラムの研修コースをUNU/INWEHに移し、今後実施して行くことになった。GEMS/WATERは国連地球環境監視システムの水質管理部門である。

 もう一つもGEMS/WATER構想に関係するもので、UNU/INWEHは水の化学的分析の総合的研修プログラムを開発、実施するために、大学、政府研究機関、民間企業の協力組織を確立した。大手分析機器メーカーのヒューレット・パッカード・コーポレーション、バリアン・インターナショナルと、協力組織への参加についての予備的な協定が結ばれた。両社は今後、カリキュラム開発に参加し、協力機関の研修所での計器購入を支援し、さらに途上国の顧客の研修プログラムへの参加を援助する。最初の研修モデルは1998年に提供される予定。

 国連大学学長は4月、つくば市の農林水産省食品総合研究所で1年間の研修を終えた5人の国連大学研修生に修了証書を授与した。この研修プログラムの主な目的は、途上国の食品研究機関の人材を育成することにある。国連大学キリン・フェローシップはキリンビール株式会社から毎年3,400万円の研修助成金の提供を受けて1993年4月に発足した研修事業で、事業は今後5年間に延長されている。キリンビール社の資金援助により国連大学は毎年、途上国の研究者5人に食総研での食糧・飲料の保存加工等の技術に関する、研究を兼ねた高度の研修を受けさせるとともに、帰国後の研究支援も行っている。





1997 Annual Report