国連大学の活動:課題と挑戦


環境

 国連大学の環境プログラムでは、人類の活動と自然環境の相関関係を重点に研究が進められている。研究活動は以下の四つのプログラムの下で行われている。

持続可能な資源管理

このプログラムの中心となるコンセプトは、土地と水資源の持続可能な利用と、人間の活動に起因する、あるいは自然の環境変化に対する生態系の脆弱性である。プログラムはまた効果的な環境の監視と制御も重視している。研究活動は国連大学本部の調整の下で、世界的なネットワークを通じて実施されている。

持続可能な開発のためのエコリストラクチャリング

世界の環境問題のほとんどは、現在の開発のプロセスが破綻しているか、不十分であることに原因がある。UNUの研究活動はこれらのプロセスの管理方法を改善し、それが持続可能な形で実施できるようにし、成長を活性化することを目標に進められている。これらの活動は主に東京のUNU/IASによって実施されている。

アフリカの天然資源

国連大学のアフリカ天然資源研究所(UNU/INRA)では、アフリカ大陸での人材の育成と諸研究機関の能力向上という、緊急な課題に取り組んでいる。その主な目標はアフリカ諸国が天然資源を持続可能な方法で利用する道を発見し、自給の域まで食糧生産を高める努力を支援することである。UNU/INRAの本部はガーナの首都アクラのガーナ大学に、また鉱物資源部門がザンビアのルサカにあるザンビア大学鉱山学部に置かれている。

水、環境、保健

カナダに本拠を置く国連大学プログラム「水・環境・保健に関する国際ネットワーク」(UNU/INWEH)では、世界中の研究者の専門知識を動員し、水、環境、保健に関するさまざまな課題についての教育・研究・研修・技術移転等の活動に取り組んでいる。その活動はプロジェクトを単位として展開され、研究者たちは地球規模の水に関連する問題に、革新的な対策を積極的に提案している。UNU/INWEHの作業は世界各地のネットワーク、プロジェクト・チームを通じて実施されている。
 

持続可能な資源管理

 国連大学は現在、「人間・土地・環境変化」(UNU/PLEC)と呼ばれる大規模なプロジェクトを展開している。これは人間の管理下にある農業生態系内の生物多様性に関する実証および能力育成のためのプロジェクトである。このプロジェクトは1997年、地球環境基金(GEF)から617万米ドルの資金拠出を得た。

 世界の植物の生物多様性のほとんどが、熱帯・亜熱帯地域の耕作地、半耕作地で維持されていることはよく知られている。だがこうした地域は政府の管理によって効果的に保護するには規模が大きすぎるとされている。そのため最近50年ほどの間に、かなり多数の土着の品種や農耕地の栽培品種が、農業の商業化や機械化のために消滅した。これとは対照的に、多様な品種の植物、遺伝種が生き残っている多くの地域では、その土地を管理する農民や畜産農家にいくつかの共通した特徴があることがわかってきた。作付け、耕作する品種が多様なこと、小さな規模で環境への適応が進められていること、小規模の農地で上手に栽培を成功させていることなどである。人口が増え、市場が拡大しても、昔からの農耕の知識が実際の農業作業に生かされ、商業的で集中的な生産と、適応型の技術(総合的な病害虫管理、土壌の生産性や土地の品質を有機的に維持する方法など)とが、うまく組み合わされているのである。

 食糧生産の緊急な拡大が求められている現在、こうした有効な方法を体系的に記録し、その可能性を評価することが必要である。どの程度の農地保全を進めるかを決め、各地の集落が生物多様性が危機に瀕している農業生態系を維持できるように、支援することも大切である。

 UNU/PLECは、農家や畜産農家が管理している重要な生態系中の農地を重点として取り組んでいる。このような農地は森林との境界、準乾燥地帯、山岳地帯、湿地帯、回廊地帯などに多い。

 UNU/PLECは6つの地域、すなわち西アフリカ(ガーナ、ギニア)、東アフリカ(ケニヤ、タンザニア、ウガンダ)、東南アジア(中国雲南省、タイ北部)、パプアニューギニア、中米(メキシコ、ジャマイカ)、アマゾン流域(ブラジル、ペルー)において、それらの地域をベースとする研究グループを通じて実施されている。UNU/PLECには約100人の研究者が参加しているが、多くは上記参加地域の学者たちである。こうした研究組織の構成によって、アフリカ、アジア、カリブ諸国、ラテンアメリカの研究者の連携、情報の交流、相互理解が進められ、UNU/PLECのネットワークは非常に斬新な存在になっている。

 一方、UNU/PLECの東南アジア地域会議が12月、中国の雲南省で開かれた。会議と並列して、「エコディベロップメントの対象としての生物圏保護区と類似地域における多重資源と土地利用計画」のワークショップも開催された。これは中国人間環境国家委員会(MAB)の主催で、ユネスコと国連大学による第三世界科学アカデミーの「湿潤熱帯地方の環境的に健全な社会経済的開発に向けた南南協力計画」プロジェクトの一部として行われた。会議の参加者は雲南省のUNU/PLEC研究現場も見学した。

 国連大学の「山岳生態系と持続可能な開発」プロジェクトは、いわゆる山岳アジェンダによって活発に続けられている。これは山岳・高地地帯の持続可能な開発について、深い関心を持つ学者や開発専門家の非公式グループである。山岳地帯は地球表面積の約5分の1を占め、世界の人口の10分の1がそこで暮らしている。しかし山岳地帯の資源、つまり水、電力、鉱物、木材、観光資源、レクリエーション、宗教的な霊感などは、地球上の人口の半分以上が利用している貴重な資源である。

 国連大学は「地球サミット」以後、国連の各機関および非政府機関(NGO)によるアジェンダ21第13章のフォローアップ活動を続け、この分野での研究のリーダー機関になっている。その結果、6月に開催された国連総会の特別会議「地球サミット+5」に対する寄与文書として、「世界の山岳地帯:地球規模の優先課題」や関連する政策文書が作成された。これらの総合的な活動は国連大学、スイス開発公社、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連食糧農業機関(FAO)、国際開発研究センター/国際ポテト・センターとの協力で進められた。

 このプロジェクトにおける研究「バングラデシュにおける洪水:原因と影響」は最終段階に入っており、スイス・ベルン大学地理学研究所と共同の総合報告書が作成された。

 5月には「アフリカの山岳に関する第4回国際シンポジウム」がマダガスカルで開かれた。このシンポジウムの中心的なテーマは、世界の経済的な変化の中でのアフリカ山岳地帯の開発であった。UNU/PLECのウガンダ・グループはこれを機会に、アフリカ山岳学会の下で設けられたネットワークとの交流を図り、国連大学の各種の研究構想の統合を促進した。

 1997年にはこの山岳プロジェクトは、国連大学の提供資金が減少する中で、新しい段階に入りつつあり、この領域で活躍する各種の機関との提携を深めている。

 4月には、国連大学と国際山岳開発センターの共催で、「ヒマラヤの土地利用のダイナミズムと表層土壌」ワークショップが、ネパールの首都カトマンズで開催された。このワークショップの主な目的は、主題テーマに関する共同研究の提案草稿を作成することにあった。また11月にもこの会議が再開され、山岳研究と組織的な協力の長期的な戦略が検討された。

 プロジェクト「東アジア地域の環境監視と分析」は、食糧、水、空気の汚染を監視する事業である。このプロジェクトには二つの基本的な目的がある。第一は地域的な評価のためのデータの標準値を作成することで、第二は地域が環境協定を十分に順守するための、政策上の選択肢を作成することである。このプロジェクトでは、中国、香港、韓国、マレーシア、シンガポール、タイ、ベトナムなどにある参加研究機関における、重要な能力育成事業も実施されている。プロジェクトでは同時に、参加諸国間での初めての有毒化学物質情報の交流の基礎も築かれた。

 このプロジェクトの今年の作業は、2月に東京とシンガポールで行われた国際シンポジウム「東アジア地域の環境監視と分析技術:水質汚染と水質モニタリング」から始まった。シンガポールでのシンポジウムの後、プロジェクト対象の9つの国・地域の研究機関スタッフのための研修コースも実施された。参加研究機関のすべてから食糧、土壌、魚から検出される有害物質に関するデータが提出され、具体的な成果が得られた。LANDBASEと呼ばれるデータベースが開発されたが、これには研究の成果と、持続可能な開発を改善するための地域のための政策的選択肢が含まれている。いくつかの科学論文も提出され、プロジェクトの成果として出版される予定。

 これと関連する国連大学の研究活動「自然災害管理」は、持続可能な開発の枠組みの中で自然災害の管理を研究する試みである。1997年中に、社会的な脆弱性を分析し、それを災害管理計画に取り入れるための、理論的な枠組みが完成された。この斬新なコンセプトについて、パイロット段階のテストが実施され、中国、フィジー、ドイツで行われたワークショップで学界関係者に報告された。プロジェクトは次の段階で枠組みをいくつかのケーススタディに応用する研究を始める。この研究は国際防災の10年への重要な貢献となるものと期待されている。

 国連大学と日本の環境庁が共同で運営する「地球環境パートナーシッププラザ」(GEIC=Global Environment Information Centre)は、1997年に最初の活動を開始した。GEICは環境問題に関する地球規模のプロジェクト、ネットワーキング、情報センターであり、環境的に持続可能な開発を達成するため、各国、主要セクター、人々の間の新しいレベルの協力と理解を促進している。1997年中にプラザを訪れた人々の数は12,000人を超えた。

 国際連合気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局は、GEICに対して「NGOの協議メカニズムとUNFCCC」と題する調査を委嘱した。この調査はNGOのワークショップ報告書、提出論文、それらとの協議を検討した成果をまとめた報告書である。この報告書は7項目の勧告を行っており、UNFCCC事務局は7月にボンで開かれた165の締約国会議にそれを提出した。

 GEICはこのほか、1997年中に以下の4つの分野で活動を展開した。

  • 3月に「NGOと気候変動」のシンポジウムを開催。
  • 日本で販売されている電気製品について二酸化炭素排出量の調査を実施。
  • 日本海沿岸で1月に起きたナホトカ号石油流出事故の処理に活躍した市民の役割についての報告書を作成。
  • 第3回締約国会議(地球温暖化防止京都会議=COP-3)で使用された情報システムの利用に貢献。

  •  GEICはまた、国連大学プログラム「水・環境・保健に関する国際ネットワーク」(UNU/INWEH)の、国際水域における水資源の持続可能な管理の研究について協力している。このプログラムに関連して、第6回国連大学地球環境フォーラムが6月に東京で開催された。このフォーラムは「21世紀における都市圏の水問題」と題され、急速な都市化と人口一人当たりの水需要の急増(特に途上国)、さらに地球環境に生じている各種の変化が引き起こす、環境的な危機を中心に討議を重ねた。国連大学はこの毎年開催されるフォーラムを通じて、地球環境の問題についての最新の研究成果を報告し、一般市民もそれを通じて環境問題の理解を深めている。
     

    『乾燥地域における淡水資源問題』

     水不足問題に対する解決策を多くの領域で見出すべき時期がきている。それに適する技術は伝統的な手法、高い水準の技術を必要としない方法―露による灌漑やウォーターハーベスティング(雨水利用の伝統的技術)など―の場合もあれば、地下ダムのような近代的で、大規模な技術の場合もある。重要なのは技術の水準ではなく、それを実現し、持続することが可能かどうかである。
     技術に関する問題以外では、解決の方法が経済性や資金、社会、環境などの点で受け入れられるものでなければならない。重要なのは産業、家庭、農業などにおける水の価格設定である。しかしこれは多くの政治的な問題を抱えたテーマで、水の実際のコストを反映させて価格を決めた国はどこにもない。一般の人々が持つ観念は「天からただで降ってくるものに、人間が値段をつけることができるのか」ということなのである。

    『乾燥地域における淡水資源問題』
    ユハ・I・ウィット、ユッタ・シュナイダー共編、国連大学出版局、1997年
     

    持続可能な開発のための
    エコリストラクチャリング

     国連大学のエコリストラクチャリング・プロジェクトは、さまざまな代替選択肢を提案することによって、環境に関する緊急な諸問題の解決を支援している。これらのプロジェクトを遂行しているのは、国連大学高等研究所(UNU/IAS)と国連大学新技術研究所(UNU/INTECH)である。

     UNU/IASの研究者は「地球システムの持続可能な未来:21世紀に向けたシナリオの構築」プロジェクトに取り組んでいる。未来の地球開発のためのシナリオ構築とは、地球規模のさまざまな傾向についての議論を促進することを意味する。また、それらの傾向が持続可能な開発にどのような影響を及ぼすか、検討することも含まれる。シナリオとは将来についての処方箋ではなく、将来に起きる可能性がある事象について関心を向けるために構築された、仮定的な一連のイベントである。

     UNU/IASはこのプロジェクトの一部として、統合評価モデル(IAM)の質を向上させ、それに途上国の視点を加えるため、3月に2回の国際会議を開いた。

     第1回の会議は統合評価モデルに関するIPCC(気候変動に関する政府間パネル)アジア太平洋ワークショップで、会議からは3つの重要な成果が得られた。第一は世界各国のトップレベルの学者140人が気候変動に関する最新のIAM研究の成果を発表したこと、次に、途上国の関係者に気候変動に関する最新の科学技術情報がもたらされたこと、そして第三は12月の地球温暖化防止京都会議に向けて、気候変動に関するさまざまな問題の詳細な分析結果が各国の政策決定者に提供されたことである。

     そのあと引き続いて2番目の会議「地球環境の統合評価に関する東京モデリング・フォーラム」が2日間にわたり開かれ、タイプの異なるIAMについて、それぞれがどの程度炭酸ガス排出量の安定と気候変動鎮静に効果的であるかの比較検討を行ったほか、途上国におけるIAMの普及について進展がみられた。またこれらのモデルで持続的開発に関わる諸問題についても把握できるように、IAMそのものの枠組みが拡大された。

     国連大学とインドのタタ・エネルギー研究所(TERI)は「気候変動に関するUNU・TERI議定書:京都会議のための青写真」と題する調査報告書を作成した。この調査では、いくつかの重要な問題を取り上げ、気候変動に関する議定書に含まれるべき具体的な行動を提案している。この情報は京都会議に出席する各国政府の地球温暖化についての理解を助け、交渉の選択肢を増やした。

     UNU/IASのプロジェクト「環境、貿易、工業化」では、日本産業の空洞化が日本および日本の製造業が生産拠点をおく他の2ヵ国、中国とインドネシアの環境条件に及ぼす影響の調査に努めている。

     このプロジェクトに従事する研究者は、環境・経済統合勘定のためのシステム構築を急いでいる。研究者はこのシステムを使って、中国とインドネシアの緑の国民総生産を推計している。またアジアについての二つの運用モデル、すなわち国際投入・産出モデルと一般均衡モデルの構築も進んでいる。研究者はこれらのモデルを駆使して、産業、貿易、技術の構造上の変化がエネルギー消費と環境に及ぼす影響の分析を試みている。

     このようなプロジェクト第1段階は1997年で終了した。その主な成果は次の通りである。


     「ゼロ・エミッション研究構想(UNU/ZERI)」プロジェクトは7月にジャカルタで第3回ゼロ・エミッション世界会議を開催した。この会議は「地球環境と産業成長の共生」と題され、スハルト・インドネシア大統領が開会の辞を述べた。その最も重要な成果は、参加者によるジャカルタ宣言の採択である。この宣言は参加者が将来において達成を目指しているゼロ・エミッション関連の10項目の目標を掲げ、その達成のための具体的な方策を提言している。天然資源の生産性を高め、全世界の科学者がゼロ・エミッションのための新たな技術革新を分かち合うことなども合意された。この宣言にはフィジー、インドネシア、ナミビア3ヵ国の国家元首が署名した。

     UNU/ZERIは1997年中にさらに2回の会議を開いた。第2回日本地域ゼロ・エミッション・ネットワーク会議は10月に国連大学本部で開催された。また同じ10月に、国連大学と日本電信電話株式会社(NTT)共催のマルチメディア・フォーラム「マルチメディアと地球環境−人と自然が共生するためのマルチメディア」も開かれた。

     ゼロ・エミッション研究構想は廃棄物を出さない製造工程の促進を目的としている。産業のクラスター化が進めば、一つの産業の廃棄物は他の産業の原料になる。

     UNU/INTECHの「環境規制、生産のグローバル化および技術革新」プロジェクトでは、1997年中も活発な研究活動が続けられた。このプロジェクトの主な目的は、汚染の度合いが高い主要産業部門の、過去25年間にわたる競争上の立場の変化を検討することにある。特に新工業国家群の製造業が取り上げられている。また同プロジェクトでは、「クリーンな技術」の開発と普及を支配する要因、これらの技術の途上国への移転の可能性やその際の障害を検討している。

     このプロジェクトは1997年に3回のワークショップを開催した。第1回は3月のオランダ・マーストリヒトのUNU/INTECHでのワークショップで、第2回は8月に英国イーストアングリア大学で、第3回は9月にノルウェーのオスロで開催された。これらのワークショップでは、さまざまなアイデアを討議し、プロジェクトの次の段階のための計画が調整された。1998年半ばまでには、皮革、鉄鋼、肥料の各分野における9つの途上国のケーススタディが大きな成果を上げているだろう。プロジェクトに参加している研究者は、環境規制の影響、企業が使用している環境戦略に強い関心を向けている。

     プロジェクトからは多くの重要な成果が生まれている。政策面では、研究者たちは非差別的なアプローチを取ることが必要だとする、当初からの考え方を再確認している。環境規制と競争力との関連は産業の部門によって大きな違いがあり、一括的なアプローチは適当ではない。この結論は特定の部門のケーススタディによってさらに確認されると思われる。研究はさらに、競争力の定義を慎重に検討し、それを適用する場合にもさまざまなレベル(企業、産業部門、国など)を区別して考える必要があることを示唆している。この問題に対する各国政府の対応を支援するためには、厳密な分析に基いたコンセプトの開発が大切である。
     

    アフリカの天然資源

     国連大学アフリカ天然資源研究所(UNU/INRA)は、アフリカ諸国の天然資源の持続可能な開発を引き続き支援している。1997年中に、UNU/INRAは組織の整備と能力育成活動を重点として活動を展開した。

     UNU/INRAは懸案であった新しい組織培養・生殖質保全施設を設けるべきか、それともガーナ大学にある既存の施設を強化すべきかについて、フィージビリティ調査を行った結果、新しい施設を作るよりも、ガーナ大学の施設の拡充が望ましいとの決定を下した。国連大学はこのための資金の提供に同意した。

     また別のフィージビリティ調査グループはアフリカ固有の植物標本室を設ける必要性を検討し、それをUNU/INRAに設置すべきだとの勧告を行った。

     UNU/INRAの能力育成プロジェクトの一つに、「持続可能な開発のための天然資源の保全と管理における女性の役割」がある。このプロジェクトの活動の一部として、4人のアフリカ人専門家が、天然資源管理に女性のアイデアを導入する方法について、UNU/INRAのための指針を作成することになった。この4人の女性チームの最終報告書は、UNU/INRAに次の措置を取ることを勧告している。

  • ジェンダー研究を扱っているアフリカの研究機関を強化する。
  • ジェンダーに関する視点を取りいれた、政策指向の研究に重点を置く。
  • それらの研究に基づく政策が、研究成果を正しく反映しているかどうかをモニターする。
  • ジェンダー研究に関心を持つ研究者をUNU/INRAのプロジェクト活動に加える。

  •  これらの報告書は、UNU/INRAの研究、研修および情報普及プログラムにおける優先方針の決定に役立っている。

     UNU/INRAはさらに、アフリカにおける食糧の安定供給を促進するため、二つのワークショップを開催した。一つは10月にブルキナファソのワガドグで開かれ、ここでは参加者がアフリカ各地の土壌生産性行動計画についての経験と研究成果を検討した。またザンビアのルサカで開かれたワークショップでは、アフリカの天然資源である燐酸塩を活用して、土壌の生産性を高める技術の開発について討議した。

     また1997年には、ガーナ政府の各省庁(農業、環境、財政、外交、科学技術)の責任者によるワーキング・グループが設けられ、UNU/INRAの発展を見守り、ガーナ政府のUNU/INRAについての国連大学に対する誓約の達成のために、努力することになった。

    『環境と新たな開発問題』

     ケニヤにサファリにきた観光客の一部に、サファリの料金に加えて、100ドルを象の個体数を現在の水準に維持するために寄付してほしいと言われたら、どうするかというアンケートが行われた。また寄付金は最高でどの程度まで出せるか、という質問もあった。平均的な回答は観光客1人当たり89ドルで、中間値は100ドルであった。この中間値に毎年サファリに来る観光客の数をかけると、年間2,500万〜3,000万ドルが象を現在の水準に維持するために使えることになる。この金額は象を保護するのには十分すぎるほどの額である。

    『環境と新たな環境問題』第2巻
    パーサ・ダスグプタ、カール・イェーラン・メーラル共編、クラレンドン・プレス、1997年
     

    水、環境、保健

     国連大学プログラム「水・環境・保健に関する国際ネットワーク」(UNU/INWEH)は1997年中に、世界各地に3ヵ所の国際協力事務所(ICO)を開設する作業を進めた。これらの地域事務所はプロジェクトの展開を支援し、研修や情報普及活動の地域的な拠点となるものである。所在地はメキシコ、ヨルダン、ブラジルの3ヵ所になる予定。

     これらの事務所の規模は小さく(1人から3人のスタッフ)、主要な途上国の政府機関、大学、NGO組織などに併置される。事務所はUNU/INWEHの正式な組織の一部で、関係地域の政府、研究機関などと緊密な連携を保って作業を進める。これらの事務所はUNU/INWEHが財政的な自立を果たす上で、重要な役割を果たすことになろう。

     ICOの設置に加えて、UNU/INWEHの中核的な作業プログラムの一つは能力育成プロジェクトの開始である。UNU/INWEHのアプローチの方法としては、水資源に関するさまざまな能力育成・研修の可能性を検討した上で、適切なプロジェクト・リーダーを選定する。次にコアファンドとなる必要最小限の資金を段階的に投入し、プロジェクトの開発、立案、プロジェクト・メンバーの選考、外部からの資金調達の可能性を探る。プロジェクトの提案を国際的な資金提供機関に提出、交渉に入ると同時に、国際的開発機関、政府、国連システム、財団、民間部門、NGO組織などの、水に関係する資金提供部門との関係を築くための、組織的な努力が続けられる。以下にこれまでに計画された有望なプロジェクトを挙げる。

  • メキシコの水道、下水機関のための資格取得・研修プログラム
  • メキシコの下水汚泥管理
  • カリブ海地域の沿岸海洋生態系管理
  • ガザ地域の地下水再充填
  • ヨルダン乾燥地域の水資源開発
  • アブダビでの沿岸管理
  • アフリカ・サハラ地域の持続可能な水供給開発
  • 東アフリカ・ビクトリア湖の持続可能な環境管理
  •  UNU/INWEHは1997年中に三つの能力育成活動を開始した。第一はカナダの国立水資源研究所で行われた事業で、有毒物質による水質汚染と気候変動の関連を検討するワークショップであった。第二は国際水資源協会(IWRA)の世界水会議の一部として、9月にカナダのモントリオールで開かれた「水のグローバル・ネットワーキング」と題する特別会議である。第三は米州衛生環境工学協会(AIDIS)カナダ支部の開発と運用に対する支援である。AIDISは南北アメリカを通じて水資源に関する情報と技術の普及をはかる途上国ネットワークである。AIDISネットワークは地域的なパートナー作りと、UNU/INWEHプロジェクトの拡充をサポートしている。

     UNU/INWEHはまた1997年に二つの広報活動を開始した。一つは季刊ニュースレター『ネットワーク・ニュース』の発刊である。もう一つはUNU/INWEHのホームページ(www.inweh.unu.edu)の開設である。このホームページにはプロジェクトのリスト、プロジェクト提案の募集、討議グループ、水管理の問題についての検索可能なデータベース、流域地図ライブラリー、広報板などがある。カナダのウォータールー大学がホームページ開設のために3台のサーバー、ソフトウエア、インターネット接続、技術サポート等を提供している。さらにIBMインターナショナルとの協力協定が結ばれ、その世界的な研究部門からの専門技術、ソフトウエアの提供等、多くの支援を受けている。





    1997 Annual Report