国際連合大学
背景
国際連合大学は、国際的な問題に学術的観点から取り組み、人類の平和と発展という国連の目的達成に寄与する、国際的学術機関である。国連大学は「人類の存続、発展および福祉にかかわる緊急かつ世界的な問題」(国連大学憲章)の解決に、世界各国の優れた学者が協力して取り組む場を提供し、その成果をとりまとめることを目的として1975年に設立された。
人類の知識を広げるために国連大学が用いるアプローチは、他の高等教育機関とはやや異なっている。国連大学は通常の大学のような組織ではなく、大学本部(東京)および世界各地にある独自の研究・研修センターやプログラムのネットワーク、そして世界各国の既存の大学、研究機関、個々の学者や科学者を結ぶネットワークを通じて、事業を展開している。世界中にいる国連大学の学者、科学者は国連大学憲章によって学問の自由を保障され、自由な協力を進めている。
こうした形の国際機関のアイデアが初めて提案されたのは1969年、当時のウ・タント国連事務総長が「真に国際的な性格を有し、国連憲章が定める平和と進歩の諸目的に合致する国際連合の大学」の創設を訴えたことに始まる。
国連大学は国連総会により設けられ、国連本部およびユネスコの共同支援を受ける独立した組織である。
組織
国連大学の最高意思決定機関である理事会には、国際連合事務総長と国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)事務局長により24人の理事が任命される。このような任命理事24人(任期6年)は、出身地が世界各地域に広範に配分されるよう選ばれ、個人の資格で任務に当たる。理事会はこれら任命理事のほか学長および職務上の理事である国連事務総長、ユネスコ事務局長、国連訓練調査研修所(UNITAR)所長の計28名により構成される。
国連大学学長は大学の学術、管理両面の最高責任者であり、大学の指揮、組織、運営、プログラムなど大学の業務全般を総括する。
国連大学の研究・研修活動は、東京の大学本部の学術部門および大学独自の研究・研修センター・あるいはプログラムが統括する。研究・研修センター(あるいはプログラム)は現在、世界の8ヵ所に存在し、今後さらに増設へ向けての検討が行われている。
研究・研修活動の方向―21世紀へ向かって
国連大学はこれまでに前例のない規模で世界を変えていきつつある人類の活動が及ぼす広範囲な影響を研究しており、特に開発途上国に影響を及ぼすものに重点が置かれている。国連大学の第三次中期展望では次の4領域に焦点を絞っている。
国連大学の学術活動は本部の学術部門の他、以下に述べる研究・研修センターのネットワークを通じて展開されている。
- 環境
- 科学技術
- 開発
- 平和とガバナンス
国連大学世界開発経済研究所(UNU/WIDER)
所在地:ヘルシンキ(フィンランド)(1985年3月開設)
この研究所は国連大学の最初の研究・研修センターで、人間の生活条件を幅広く改善するための、特にグローバルな規模での経済政策の研究を目的としている。内部の研究員を始め、世界各国のエコノミスト、学者が研究に加わっている。世界にはすでに多くの経済「シンクタンク」があるが、UNU/WIDERの目的は、OECD諸国内に多い既存の主要な研究機関の補足的な役割を果たし、途上国が抱える諸問題や現実を反映することにある。その究極的な目的は、途上国が健全で公平な、環境的にも持続可能な経済政策を立案する努力を援助することにある。国連大学新技術研究所(UNU/INTECH)
所在地:マーストリヒト(オランダ)(1990年10月開設)
この研究所は新開発技術の社会・経済に及ぼす影響、特に途上国での問題について、統合的な政策志向の研究・研修を行っている。特にこの分野での研究を進めている途上国の研究機関との連携を深めることに力点を置いている。現在は、新技術の経済的・社会的影響、緊急かつ重要な問題についての政策的研究、途上国での同研究所への協力ユニットの設立、博士課程在籍研究者の研修の4事業を重点的に進めている。国連大学国際ソフトウエア技術研究所(UNU/IIST)
所在地:マカオ(1992年7月開設)
この研究所の目的は、以下の3領域における途上国の自立を助け、その能力を強化することに置かれている。
(1)国内向けおよび輸出向けのソフトウエアの開発
(2)大学教育カリキュラムの開発
(3)国際的ソフトウエア研究への参加
研究所はさらに、理論と実践、大学と産業界、消費者と生産者、先進国と途上国のギャップを埋めることにも努めている。そのプログラム活動は高度の合同研究や開発プロジェクト、大学院研修のカリキュラム開発、パブリック・ドメイン・ソフトウエア(使用料のいらないソフトウエア)および出版物の普及などが中心で、ほぼすべてに関して、マカオの同研究所施設ならびに途上国の協力機関などにおける研修事業も併せ実施している。国連大学アフリカ天然資源研究所(UNU/INRA)
所在地:アクラ(ガーナ)、鉱物資源部門はルサカ(ザンビア)(1990年4月開設)
国連大学アフリカ天然資源研究所は、アフリカ人自身および地球社会全体による、アフリカの天然資源の管理と回復を図る活動を支援することを目的として設立された。この研究所のおもな目的は、アフリカにおける各国研究機関の強化を図り、アフリカ大陸全体から科学者、技術者の参加を得ての研究活動の展開、そしてそれら研究陣に生産的な活動のための知識と革新的な技術を創造、応用する能力を提供し、自立的開発にかかわる、天然資源利用の社会経済的側面を含めた、あらゆる問題点の理解を深めようとするものである。プログラム活動の主テーマは次の通り。
(1)土壌および水の保全と管理
(2)アフリカ固有の食糧穀物その他の有益な植物の管理
(3)鉱物資源の開発国連大学高等研究所(UNU/IAS)
所在地:東京(1996年4月開設)国連大学高等研究所は、国連大学の中でも最も新しい研究・研修センターである。この研究所は社会と自然環境との相互作用がもたらす諸問題に対して、将来的な展望に基づく独創的な解決策を研究することを目的としている。UNU/IASの研究プログラムでは、持続可能な開発のためのエコ・リストラクチャリング、メガシティーと都市開発、および多国間主義とガバナンスという、環境面から見て持続可能な開発に関する三つの相互に関連するテーマについて研究を行っている。またUNU/IASでは、博士課程研修コースや上記の三つのテーマのいずれかを対象とした短期研修講座などを提供する大学院教育プログラムも設けている。
東京の大学本部の学術部門はまた、民主主義と人権や21世紀の国連システムから山岳地帯の生態学や持続可能な開発にいたるテーマに関して、世界各国の研究機関の参加を得て実施されているプログラムやプロジェクト・ネットワークを統括している。
また、国連大学は三つの専門的プログラムを実施している。ひとつは1988年7月にベネズエラ・カラカスに設置された国連大学中南米バイオ技術プログラム(UNU/BIOLAC)で、これはこの地域においてバイオテクノロジーの開発と推進を行っている。2番目はヨルダン・アンマンに設置された国連大学国際リーダーシップ・アカデミー(UNU/ILA)(1995年4月設立)であり、ここでは将来、世界の指導層となるべき若い人材を対象として、情報交換、経験の分かち合い、交流の場を提供し、国際社会のリーダーを育成することを目的としている。3番目は1996年10月にカナダ・オンタリオ州ハミルトンに設置された国連大学プログラム「国際水・環境・保健に関するネットワーク」(UNU/INWEH)で、これは水、環境、保健に関するグローバルな課題について、国際的な専門知識を教育・研修・研究・技術移転プログラムに統合しようとするものである。
大学院研修活動
1976年から1997年までの間に、約1,600人の国連大学フェローが国連大学のネットワークで研修を受けた。国連大学の大学院研修プログラムは、自立的開発促進のために途上国の研究機関の機能を強化し、特に途上国の学者、研究者に国連大学研究ネットワークに参加する機会を提供し、それによって積極的な学術上の交流を図ろうとするものである。フェローは国連大学が重点とする領域に関係が深い各国研究機関からの推薦に基づいて選ばれ、候補者は研修修了後は出身機関に戻ることを誓約しなければならない。
出版活動
国連大学の出版局は、学術書を出版すると同時に、5種類の学術専門誌の刊行に協力している。また、広報部が発行するニュースレター、『プログラム活動の現場から』(Work in Progress)、UNU Nexionsやその他の出版物は国連大学の主要な情報媒体として、大学の学術ネットワーク内で進められている研究や事業の進行状況を報告するものである。
財務
国連大学は国連の通常予算からは一切の資金を得ていない。大学の活動は各国政府、機関、財団からの任意の拠出金(寄付)を財源としている。
年間事業費は国連大学基金の運用益を基本財源としており、1997年の年間予算は約3,900万ドルである。
