The United Nations University

国際連合大学
2000年年次報告書(HTML版)


ネットワーク活動

 研究課題の国際化と急速な情報通信技術の進歩により、知識の追求、教育、知識の普及などにおいてネットワーク活動が基本的重要性を占めるようになった。この状況を反映して実務者と研究者をつなぐ新しいネットワークが急速に増えている。また、通信技術革新により、国連大学が他の国連諸機関や学界、専門機関、民間組織、市民団体などを包含するより大規模なパートナーシップ関係を築くことも可能になるであろう。

 ここ数年、国連大学は新しい事業計画の策定を進めており、主要な研究集団や国際機関、企業との共同作業を重視する一方、国連大学の活動領域に沿った目標を掲げる外部のネットワークへの参加を進めてきた。本報告書の付録2に、2000年度に国連大学が他の機関、ネットワークなどと結んだ協力協定などのリストを掲載する。国連大学としては、特に他の国連機関との提携強化に努めるほか(詳しくは次章参照)、特に途上国の研究機関および関連機関との提携強化も重視している(付録3参照)。

 本章では、国連大学が参加する主な研究ネットワークの活動領域の概略について述べる。


国連大学と西暦2000年世界地熱会議

 現在、世界で生産される再生可能エネルギーでトップを占めるのはバイオマスで、2位が水力、その次が地熱エネルギーである。地熱エネルギーを実際に利用している国の数は2000年現在で58カ国を超えた。地熱エネルギーを発電に利用したり暖房などに直接利用する国は今後さらに増えるものと思われる。国連大学は20年以上にわたり、この安全でクリーンなエネルギー源の効率的利用の促進に努めてきた。1979年から2000年までにアイスランドの国連大学地熱エネルギー利用技術研修プログラム(UNU/GTP)で期間6カ月の研修を修了した研究者、技術者は245名にのぼり、出身国も36カ国に及ぶ。また、70名以上が同プログラムの短期研修(2週間〜4カ月)に参加した。

 5月28日から6月10日まで大分県別府市(前半)と岩手県盛岡市(後半)で開かれた「西暦2000年世界地熱会議」では、UNU/GTPが準備段階から大きくかかわった。世界地熱会議は、国際地熱学会が5年ごとに開催するもので、2000年の会議には61カ国から1,250名(プラス同行メンバー100名以上)が参加、発表論文も670点に上った。国連大学学長が全体会議で国際協力をテーマに講演したほか、会期を通じてUNU/GTPで1979年から99年までに研修を受けた国連大学フェローが88点の学術論文を発表した。元フェローは会議に大きく寄与したばかりでなく、かれらが参加したことにより地熱エネルギー利用をめぐる国際協力の枠組みの中でのその所属機関や出身国の地位も確実に高まった。


グローバル・ディベロップメント・ネットワーク(注14)

 開発に関するすべての問題を研究し、その知識を共有することを目的に世界各国の研究機関やシンクタンクで組織する「グローバル開発ネットワーク(GDN)」の活動が最近、注目を集めているが、国連大学もこのネットワークに少なからず寄与している。GDNは特にネットワークを通じた共同作業による個々の機関の研究能力向上と、研究者から政策立案者への円滑な知識の伝達の2点を重視している。GDNが掲げる「開発に関する知識の創造と共有」という目標は、国連大学に与えられた使命とほぼ重なる。

 東京で開かれた2000年度グローバル・ディベロップメント年次会合ではこのネットワークの目標達成に向けて国連大学が多くの面で協力した。「開発への貢献」をテーマに著名な4人の学者がそれぞれの専門領域を通じた開発への関わりについて議論したパネルディスカッションの議長を国連大学学長が務めた。さらにプラン・クロー文化開発基金のルク・ドラリボ氏がUNU/INTECH主催のパネル討論「技術革新のための国家的、地域的システムの強化」の議長を務めた。


注14: http://www.dgnet.org


食糧・栄養プログラム

 現在、米コーネル大学を活動拠点として運営する国連大学食糧・栄養プログラムは国連大学設立当初からの最も実績ある研究プログラムのひとつで、2000年にはグローバル規模のプロジェクト6件とより小規模のプロジェクト多数を継続実施した。また、各種専門技術の研修で15名の若手研究者にフェローシップを提供し、学術季刊誌2種も従来通り発行した。プログラムが実施中のプロジェクトは以下の7件。

  • 国際食糧データシステムネットワーク(INFOODS)
  • 国際鉄分栄養プロジェクト(IINP)
  • カロリー摂取量国際諮問グループ(IDECG)
  • 多国間成長指標研究(MGRS)
  • 食糧・栄養研究機関の能力強化のためのグローバル構想
  • アフリカのリーダーシップ構想(国際栄養科学連合(IUNS)との共同プロジェクト)
  • 国別食物標準摂取量の設定基準の調整
 2000年度には、アフリカ諸国の研究能力強化を目的とするプロジェクトの実施方法効率化に重点が置かれた。そのためのワークショップを東アフリカと西アフリカでそれぞれ開催した。


ゼロエミッションフォーラム

 国連大学ゼロエミッションフォーラム(UNU/ZEF)は、生産ラインに投入する原料が残らず最終製品化される、あるいは生産過程から出る廃棄物に他業種用原料としての付加価値を持たせる産業モデルの開発・普及を目的とする。最終的には、産業構造を一連の生産サイクルとリサイクルシステムからなる一貫システムに根底から改造する基本的産業構造改革を目指す。改革が完成すると、各産業は複数のクラスター(集合体)を束ねた単一の企業体になるか、あるいは異業種同士が相互に依存する組織になり、産業界全体として地球の大気、土壌、水の汚染原因である廃棄物が一切外部に排出されなくなる。

 UNU/ZEFは、社会と技術の傾向を分析する多領域横断型の国際共同研究を推進するために産業界、地域行政、学界代表が参加するフォーラムである。同時に、世界各国の産業・社会セクターのすみずみにまでその土地ごとのゼロエミッション意識を浸透させ、ひいては公共政策にゼロエミッション理念を確実に反映させる意図もある。現在、このネットワークには日本の企業40社と60以上の地方自治体、それに研究者75名が参加している。


国連大学と第2回世界水フォーラム
−21世紀における水の「安全保障」

 世界中の非常に多くの人びとが、日常生活の基本的な用途を満たすために必要な量の安全な水を確保できずにいる。国連大学は、水の安全保障に関連する幅広い問題について研究を進めてきた。第2回世界水フォーラムはオランダのハーグで2000年3月17日から22日まで開かれ、閣僚会議ではハーグ宣言が採択された。国連6機関−国連食糧農業機関(FAO)、国連環境計画(UNEP)、国連大学、世界保健機関(WHO)、世界気象機関(WMO)−の最高責任者もこの閣僚宣言を支持すると表明した。宣言では、21世紀に水の安全保障を確保することを共通目標に掲げ、水資源管理に関し国連システムが重要な役割を担うことが確認された。

これを受けて国連大学は、ユネスコの協力のもとに『世界水発展報告』(WWDR)の制作を担当することになった。報告は2年おきに発行する予定で、発行時点での地球全域の水資源の状況に関する調査結果を報告し、さらに状況改善の方法に関する勧告も掲載する。調査は「水量、水質、利用」「水資源管理における組織的、社会経済的、環境的側面」「現在と今後の問題」のテーマに沿って行う。次回の世界水フォーラムは2003年に日本で開かれる予定で、国連大学は共催機関として日本政府が進める準備作業に協力する。


地球山岳パートナーシップ・プログラム

 国連大学は長年にわたり、山岳の持続可能な開発をめぐる問題を研究する世界各地の専門家を結ぶグローバルなネットワーク作りに協力してきた。アフリカ山岳協会、アンデス山岳協会など地域別の山岳協会設立作業への協力がその例である。国連大学が出版に協力している学術誌Mountain Research and Developmentは、各地域の山岳研究者をつなぐネットワークの主要なコミュニケーション媒体である。2002年の国際山岳年を目前に控えて、この領域での国連大学活動が重要視されている。新たにスタートした「国連大学地球山岳パートナーシップ・プログラム」では、天然資源の枯渇、生物多様性の減衰、人口圧力、脆弱な社会インフラ、地域的山岳管理体制の欠如など山岳をめぐる多くの問題について長期的協力体制のもとで研究を進める。

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