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国際連合大学
2000年年次報告書(HTML版)
領域横断的研究課題
「国連大学戦略計画2000嗅ぎ」は、これまでに詳述してきた研究領域ごとの作業を補完する形で、複数の領域にまたがる問題に関する取り組みを重視している。これには既存の研究領域を越えて広がる作業や、国連大学プログラムの枠組みからは外れる他の学術分野も関わってくる。グローバル化をめぐるいくつかの問題、すなわち、その推進力、影響、政策的対応などについては、すでに国連大学が重要な多領域的課題として取り上げている。大学本部による国際機関の正当性に関する研究、あるいはグローバル化のガバナンスに関するUNU/WIDERの研究などがその例である。WIDERは、グローバル化の流れから取り残されている途上国の問題に関しても多領域にまたがる研究を実施している。
本章では、特に国連大学「グローバル・エトス」国際会議とジェンダー主流化に関する国連大学の取り組みについて述べるとともに、地球規模の環境ガバナンスに関する研究についても紹介する。
普遍的倫理観の創造へ向けて科学技術のみならず政治や社会思想にもみられる驚異的な進展は、人類社会に対するわれわれの心構えと取り組みを大きく変え始めた。おおむね見通しは明るいとはいえ、こうした進展においては慎重な対処が肝要である。方向を誤れば、すでに多くの深刻な問題を抱えている地球の自然環境が一層圧迫されるばかりでなく、世界規模での不平等、貧富差が拡大し、国際政治上の意志決定を行う際の知識と影響力がごく一部に集中する傾向が一層助長されることになる。国連大学と直属の高等研究所は、10月24日の国連デーを初日に、3日間にわたる国際会議「グローバル・エトス」を東京の国連大学本部で開催した。国連開発計画と東京フォーラムの後援で開かれた会議では、地球社会が抱える倫理上の主要課題をめぐり、人類すべての進歩のための共通の基盤を見出すことを目的に、相互に関連する4つのテーマ、「グローバル資本主義と持続可能な開発」「国際社会の正義と公正」「科学・知識・倫理」「宗教・ジェンダー・文化」が討議された。
ハンス・クング独チュービンゲン大学エキュメニカル研究センター名誉所長、トーマス・アクスワージー米ハーバード大学教授、ヤース・キム・ユネスコ哲学倫理局ユニバーサルバリュー・プロジェクト前担当官の3人がそれぞれ基調講演を行い、公正で平和なグローバル文明の発展にかかわる倫理上の問題について考えを述べた。基調講演ではいずれも、グローバル化の影響を十分に理解するために真にグローバルな対話を広げる必要性が指摘され、3日間にわたる討論でも多くの講演者が言及した。
会議終了の翌日、「グローバルな倫理観と価値観」と題した国際青年シンポジウムが開かれ、参加した学生たちは、国際会議で議論された問題について寛いだ雰囲気のなかで意見を交わし合った。シンポジウムのあと学生たちから、今後も継続して討論などを通じて国連大学の研究活動に加わることができるように、「国連大学学生協会」といった組織を作ってほしいという希望が寄せられた。
グローバル・エトス会議は、2001年の国連「文明間の対話年」(1998年総会決議 53/22)に関連して国連大学が主催する一連の行事の最初のもので、アナン国連事務総長が会議に寄せたメッセージで述べたように、国連大学は「国際社会の構成国すべてに影響を与える問題や挑戦について研究することが義務づけられており、その意味で"文明間の対話"に寄与するにふさわしい機関」である。国連大学は2001年夏に東京と京都で文明間の対話をテーマに大きな国際シンポジウムを開催するが、その事前作業として2001年前半に4回のワークショップを開く。各ワークショップでは文明間の対話という文脈の中で、教育、科学、倫理、およびマスメディアの役割などに焦点が当てられる。
ジェンダー問題の主流化国連大学システムを構成するほとんどのユニットの研究・研修プログラムの中で、ジェンダーに関連したテーマを取り上げているが、「国連大学戦略計画2000」では、ジェンダー問題にこれまで以上に重点を置くことを謳っている。これは、ジェンダー問題は、特に女性を対象とする研究や研修プロジェクトとして、それのみ個別に取り上げるべきテーマではないという認識に立脚している。目的はむしろ、個別のジェンダー研究の範囲を超えて、研究プログラムの編成、モニタリング、評価すべての面にジェンダー意識を反映させる体系的な取り組みを具現化することにある。このため国連大学では、大学機構全体でジェンダーを主流化するための基本的指標となる「ジェンダー行動計画」の策定作業を進めている。プロジェクトの企画、実施、モニタリング、評価のすべての面にジェンダー意識を反映させる上で必要なルールと推薦事項の概略を示す、国連大学の活動範疇におけるジェンダー主流化のための具体的目標を明確化するもので、将来の研究・研修活動で特に優先すべき領域も特定する。
2000年度にはジェンダー行動計画へ向けた第一歩として、女性学とジェンダー問題の専門家10名を大学本部に招き、ジェンダーに関してさらに研究すべき問題領域についての提言を受け、その中で国連大学にふさわしい研究領域とそれらの領域でもっとも有意義な成果をもたらすために必要な取り組み方に関して意見交換した。活発で要点を踏まえた議論の中で、国連大学と世界の学術社会や国際的政策立案機関などとの密接な関係を十分に活用すべきであることが特に強調され、国連大学がジェンダーに関する学術的研究ネットワークの中核として、学術研究の成果を政策に反映させるよう機能する必要があるとする結論に達した。さらにその中で、特に途上国と先進国双方の視点をリンクさせることに重点を置くべきであることが指摘された。
WTOとグローバル・ガバナンス(注10)WTO(世界貿易機関)はグローバル・ガバナンスの領域における主要アクターのひとつである。1995年1月の創設以来、ほぼ140カ国の各種国内規制の深部にまで国際貿易ルールの適用範囲を広げ、その影響が市民一人ひとりの日常生活にまで及びはじめている。その結果、これまでの通商政策の管理範疇を外れる分野でも批判にさらされるケースが増えている。その批判は、シアトルやその他の都市での事例に見られるように、公共の利益を代表する団体などが、WTOの諸手続きへの参加を求めたり、あるいはWTO自体の大幅な機構改革を要求するなど、さまざまな形で起きている。
改革にはかなりの曲折が予想される。WTO構想の具体化に関わった当事者は、地球規模の経済協力体制の柱となる機構を築き上げたという自負を持つ。かれらは、障壁の引き下げや合意に基づくルールでの貿易推進という、各国政府から付託された役割をその通りに成し遂げたと主張する。
当面、最大の課題は、WTOシステムに対する各方面からの圧力に各国政府がどう対応するかである。各国政府としては、世界経済の比類ない成長をもたらし、世界の国々の平和的共存にも寄与するこの新しい貿易の制度はそのまま維持したいというのが本音である。解決の道を探るため、国連大学は、国際政策の立案・決定に関与するさまざまな分野の多くの専門家から提言を受けた。グローバル・ガバナンスにおけるWTOの役割に関し、コフィー・アナン国連事務総長やレナート・ルジェロWTO前事務局長を含む、世界のトップクラスの識者から貴重な所見が寄せられた。
地球環境ガバナンス複雑に絡み合った相互作用の働きが、地球環境に大きな影響を及ぼしているが、国連の協定や条約は特定の問題にのみ焦点が絞られる傾向がある。国連大学は、環境問題に関して総合的に調整の図られた取り組みの在り方を探る国際会議を1999年7月に開いた。「インターリンケージ:多国間環境条約の相乗効果と調整」と題したこの会議は、この問題の理解と認識を高めるための国際社会全体による前向きな努力を促す上で効果的な触媒の役目を果たした。会議は、科学的メカニズム、情報システム、制度的側面、財務、問題解決マネージメントという5つの大きなカテゴリーに焦点を絞った(注11)。この会議以降、いくつかの多国間環境条約においてインターリンケージに関するさまざまな決定がなされた。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、ワシントン条約、国連砂漠化対処枠組条約(UNFCCD)ほか、いくつかの多国間環境条約の条約締約国会合(MOPs)と締約国会議(COPs)の事務局では実際にインターリンケージのためのプログラムを発足させている。
しかし、重要な問題についてさらに理解を深め、インターリンケージに関する現場サイドでの適用ルール共通化にはまだ多くの作業が必要になる。そのため国連大学では1年ごとに、段階的に必要事項を詳細に検討する3年計画のインターリンケージ・イニシアチブをスタートさせた。最終評価作業は2002年に行う。上記5カテゴリーのそれぞれについて総合的理解を深め、合わせて地域や国単位で使用できる作業実施枠組みのモデルの設計・開発も行う。このモデルは、各種の多国間環境条約の目的間に重複や軋轢を生じる可能性のある事項にも適用しうるものとする(図3参照)。
国連大学は2002年に第2回インターリンケージ国際会議を開き、3年計画の最終評価を行うとともに、他の機関や類似のプログラム、あるいは各国政府などが独自に実施する活動などとの照合も行う。第2回会議は、インターリンケージ問題に関連するさまざまな意見の交換と今後の方向付けならびにニーズ識別のフォーラムとしての役割も持つ。さらにインターリンケージ作業の総合的特質を理解するのに役立つ場となるのみならず、こうした努力や作業の結果を「リオ・プラス10」に反映させる窓口としての機能も果たす。
注10: Gary P. Sampson, ed., The Role of the World Trade Organization in Global Governance、国連大学出版部、東京(2001)。
注11:Inter-linkages Report - http://www.geic.or.jp/interlinkages/docs/UNU Report.PDF
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