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国際連合大学
2000年年次報告書(HTML版)
概 要国連大学の本旨は、平和と発展のための知識を深めることである。この目標に向けて多岐にわたる領域で研究と研修活動を実施しており、本章では、2000年度事業を要点を絞って紹介し、次の各章でそれぞれの進展状況をできる限り詳しく述べることにする。
国連大学理事会は1999年12月の理事会において「国連大学戦略計画2000−人間の安全保障と発展のための知識に貢献」を採択した。2000年度から、4年間にわたるこの計画の実施が開始され、研究・研修活動の質的レベルの向上と効率化が図られる。学術活動に加え、2000年度の重点事項として、各界のさまざまなパートナーとの連携強化が図られた。特に、大学本部の所在国である日本、そして国連大学直属の研究・研修センターおよびプログラムの所在国の政府機関や市民社会、企業などとの協力関係の強化に重点がおかれた。
その第一歩として、新たな1000年のスタートを祝う国際会議「新千年紀の幕開け−国連とガバナンスの在り方」を2000年初頭に東京の本部国際会議場で開催した。世界に現出している新しい潮流をつぶさに検証し、そこから国連が取り組む、人類全体に関わる課題に関する新しい思考や理念を提示することを目的とした。会議での講演や研究発表は、国連ミレニアム総会における事務総長報告(A/54/2000)作成の資料にも使われた。
2000年は国連大学の活動開始25周年目に当る意義深い年であった。国連大学は、それを記念し大学の創設と発展に尽力された多くの方々を来賓にお迎えし、東京の本部国際会議場で記念式典を開いた。国連大学は、大学としてはまだ歴史が浅いとはいえ、25年の間には多くのことがあった。当初、三つの領域での研究プログラムでスタートした国連大学は、現在、東京の大学本部、12の研究・研修センターあるいはプログラム、そしてそれを支える世界各国の機関、研究者をつなぐグローバルなネットワークを擁するまでに成長した。国連大学憲章が掲げる目標、理念を全うするための研究、大学院レベルの研修、そして知識の普及のすべてにおいて充実した取り組みが行われている。
国連大学の使命と主要な役割 [使命]
「国連とその加盟国および国民が関心を寄せる、緊急かつ地球規模の問題解決のための努力に、学術研究と能力育成をもって寄与すること」[主要な役割]
学者・研究者の国際的共同体としての機能 国連と世界の学術社会の「懸け橋」 国連システム全体のシンクタンク機能 能力育成、特に途上国における能力育成支援 現在のプログラム活動は、「平和とガバナンス」「環境と持続可能な開発」の2領域に大きく集約される。戦略計画2000では、重なり合う部分が少なくない、このふたつの広範なプログラム領域の枠内で人間の安全保障と開発にかかわる五つのテーマ−平和、ガバナンス、開発、科学技術と社会、環境−を設定している。さらにこの大枠のなかで、貧困問題、情報技術(IT)、気候変動、人道的介入など、さまざまな問題について実際に研究や研修を実施するとともに、ネットワーク作りを行っている。活動の成果は、専門委員会、国際会議、研究会、書籍、学術誌、ニュースレター、それにインターネットなどを通じて広く社会に普及させるよう努力している。
国連大学理事会国連大学の最高意志決定機関は国連大学理事会である。2000年11月20-24日、中国のマカオ特別自治区にある国連大学国際ソフトウエア技術研究所(UNU/IIST)でその第47回会議が開かれた。会議では、次の5議案が討議された。
平和とガバナンス
- 2000年度事業報告
- 国連大学研究・研修活動を通じた国連機構全体への貢献度の強化
- 国連大学活動の途上国貢献度の強化と活動への途上国の関与拡大
- 募金活動
- 2001年度広報活動での重要課題と事業の選定
[平和] コソボにおける一連の紛争とそれ以降の情況は国際社会に難しい問題を投げかけた。NATOの行動は多くの成果をもたらした一方で、国連安全保障理事会を迂回する形で軍事介入が実行されたことは憂慮すべき前例を残した。紛争が頻発し、一段と複雑化する現在の世界で、国際社会はひとつのジレンマを抱える。行動をおこしても、座視しても、結局は非難の矢面に立たされるからである。問題は、ナチスによるホロコーストあるいはルワンダでの大量虐殺と同一線上にある事態が現実に存在する一方、安保理での拒否権という別の現実も存在するなかで、いかに行動すべきかである。明確な答が存在しない以上、人道的介入に関する新しい総意を生み出していくしかない。
国連大学とアルスター大学が共同で運営する「紛争解決・民族問題国際プログラム(INCORE)」の「暴力からの脱皮(Coming out of Violence)」と題した共同研究では、和平プロセスにとってプラスあるいはマイナスとなる要素を洗い出す作業を行った。交渉と当事者の組織的変化、政治的暴力、経済的要因、外部要因、世論、シンボリズムなどの問題を取り上げている。和平交渉は中断や決裂を繰り返しながら、一歩づつ妥結に近づくのが常である。この研究は、今後の内戦の和平交渉においては、参考となる前例を見つけることがますます重要な作業になると結論づけた。
[ガバナンス] 大学本部の研究プロジェクト「国際機関の正当性(Legitimacy of International Organizations)」では、国際機関の利点が最大限に活かせる、国際機関にもっともふさわしい性格のニッチ(隙間領域)を探ろうとしている。この種の研究ではこれまで、国連平和維持活動の技術面の不備、不適切な活動実施、そして安保理による意志決定プロセスの欠点など、もっぱら組織的側面に焦点が絞られる傾向があった。国連大学は、現代の国際民主主義文化の正当性を支える規範と根拠こそ、決定的な重要性を持つと見る。国際政治の規範的側面が多くのポリティカルアクターの政治的判断や意志決定、行動などに決定的影響力をもつとするのが、このプロジェクトの考え方である。
2000年は、グローバルエコノミーを取り仕切る主要国際機関に対する抗議活動がかつてない盛り上がりを見せた年であった。なかでも世界貿易機関(WTO)は、紛争調停機関として強大な力をもつだけに、従来の通商政策の領域から大きくはみ出す分野での論争に巻き込まれている。国連大学は、グローバル・ガバナンスにおけるWTOの役割について、多くの著名な研究者と政策決定者を招請し、意見を求めた。世界経済を飛躍的に拡大させた現在の貿易のシステムを温存しつつ、WTOシステムに集中する多様な圧力に各国政府がいかなる政策対応をなすべきかに論点が集中した。
環境と持続可能な開発[開発] 経済活動は市場経由よりもむしろ個々の集団同士で行われるもののほうが多い。複数の所帯同士、企業や地域団体同士、NGO同士での取引のほか、政府間でも経済活動は行われる。しかしエコノミストの目は市場経由の経済活動だけに向けられがちである。「制度と開発」と題した国連大学世界開発経済研究所(UNU/WIDER)の研究プロジェクトによって、集団内の経済活動の様式にも各種あり、その様式もマクロの経済環境によって影響を受け、さらに活動様式が変われば取引効率や公平性、満足感などが大きく変わることが明らかになった。したがってマクロレベルで経済環境を変える場合は、こうしたグループ内経済活動への影響もあらかじめ計算に入れておく必要があることをこの研究は指摘する。
富裕国、貧困国の区分けの要素に、所得と併せて情報量が重視されはじめたことを受けて、UNU/WIDERでは経済成長における情報技術の重要性に焦点を絞った研究を進めている。2000年にはこの研究の成果を取り上げる国連経済社会理事会(ECOSOC)のIT上級部会へ向けて準備するための会議を開いた。その討議を踏まえ、7月7日に開かれた情報技術の開発と経済成長への影響に関するECOSOCのパネル討論で、UNU/WIDER所長代行が議長を務めた。憂慮されることは、途上国の多くでIT関連投資が全く見られないか、あるいは急速な技術変化の恩恵に浴していないことである。さらに、IT進歩主導の経済成長には自国の条件に合わせた技術改良が不可欠である。いまのところ、多くの途上国は、グローバル規模で進歩する技術を自国の便益に合わせて手直しするために必要なインフラに関しても技術力に欠けている。
[科学、技術、社会] 技術革新は、人間開発を促すもっとも効果的な切り札のひとつである。いかなる国も国民の生活向上を願うのであれば、技術革新を国家計画の柱の一つに据える必要がある。国連大学新技術研究所(UNU/INTECH)は、技術革新そのものだけでなく、国家的技術革新のシステムを指向した政策的アプローチに関する研究を行っている。国連大学は中国科学技術省と共同でこの問題に関する国際会議を2000年9月に開催した。会議では参加した研究者ならびに政府関係者から50点を超える学術論文が発表された。
マカオの国連大学国際ソフトウエア技術研究所(UNU/IIST)では、急速なコンピューターの普及とITの進歩に対応して、ソフトウエア技術に関する研究、開発、教育の各面で途上国の能力強化を支援している。UNU/IIST自体も高度のソフトウエア技術を土台にした信頼性の高い大規模ソフトウエアシステム設計に関する研究をいくつか進めている。2000年度にUNU/IISTが受け入れた研修生は13カ国から合計53名にのぼる。
[環境] 「人・土地管理・環境変化(UNU/PLEC)」プロジェクトは、世界各地の農業体系のなかでの生物多様性保全のための持続可能な参加型手法の開発を目指す。PLECネットワークには現在、40以上の研究機関と専門研究者200名のほか、数百名にのぼる農民が参加する。タンザニア、ケニア、そしてアマゾン氾濫原で行った予備調査では、農耕や、人間の手による自然管理が、生物多様性の増進や土地の体質改善を促す可能性を秘めることが示された。原生林よりも耕作地のほうが生物種の多様性に富むことも少なくない。
1997年から98年にかけて発生したエルニーニョ現象は世界各地に異常気象を引き起こし、大きな被害をもたらした。このエルニーニョで特に被害の大きかった16の国を対象に、国連大学は他の機関との共同で、異常気象に起因する地球規模災害防止のための基本対策に関する国際的研究を行った。これらの国では、暴風雨、熱波、山火事、寒波、干ばつなど、エルニーニョ起因の異常気象のために甚大な被害が出た。死傷者は数千名に上り、被害総額も320億ドルから960億ドルと推定される。エルニーニョの被害をもっとも受けやすい途上国が予報機能の改善を含めたエルニーニョ対策に十分な資金を投入しないかぎり、これらの国々は今後も2年から7年おきに数千名の死傷者と数百億ドル規模の経済的損失を被ることは避けられないことが今回の研究でわかった。
2000年度から、森林に関する研究活動が一層強化されるにともない、国連大学は「森林の価値−森林と持続可能な開発に関する国際会議」を10月12日−13日に本部国際会議場で開催した。持続可能な開発を促すうえで森林が担う役割を再確認する目的で、森林と持続可能な開発に関する世界委員会(WCFSD)のほか、環境庁と林野庁との共催で開かれたこの会議では、広中和歌子参議院議員、オーラ・ウルステンWCFSD共同議長(元スウェーデン首相)、ジョージ・ウッドウェル米ウッヅホール研究センター所長などが講演を行った。
国連大学アフリカ天然資源研究所(UNU/INRA)はこの数年、所在国ガーナでの能力育成事業に力を入れてきたが、今年度は、アフリカの土壌の肥沃度復元に関して国連開発計画(UNDP)と共同で実施する研究プロジェクトでザンビアの関係諸機関と密接な協力体制を組んだ。ザンビアの土地の多くは植物の生育に必要な燐分が不足しているが、このプロジェクトではザンビア国内で採取される燐灰石を分解して燐を取り出し、それを土壌再生に役立てる。
領域横断的研究国連大学戦略計画2000では、上記のテーマ領域ごとの研究のほか、複数の領域にまたがる問題についても研究の必要性を指摘する。今年度にはグローバリゼーションとグローバル・エトスの問題に関する複数の研究で特に進展が見られたほか、すべての研究活動においてジェンダー問題に焦点を当てる努力がなされた。
2000年の国連デーを記念して、普遍的倫理観について考察する国際会議「グローバル・エトス」が、インターアクション・カウンシルの協力を得て、大学本部と国連大学高等研究所(UNU/IAS)の共催で10月24日から3日間にわたり本部国際会議場で開かれた。ハンス・クング独チュービンゲン大学エキュメニカル研究センター名誉所長、トーマス・アクスワージー米ハーバード大学教授、ヤース・キム・ユネスコ哲学倫理局ユニバーサルバリュー・プロジェクト前担当官が基調講演を行った。討議では、正義と平和に基づく新たな地球文明の創生に深くかかわる倫理の問題に焦点が絞られ、科学技術と政治・社会思潮を正しく管理すべきだとする意見が大勢を占めた。会議は、2001年の「国連文明間の対話年」に向けた国連大学の諸活動の先駆けとなった。
国連大学がその活動を展開するうえで常に「水」の問題を意識したのが、2000年の特徴だった。オランダのハーグで3月17日から22日まで開かれた第2回世界水フォーラム(WWF)では最後の閣僚会議で「閣僚宣言」が採択され、国連大学とその他の国連5機関(FAO、UNEP、UNESCO、WHO、WMO)を代表して出席した学長ら各機関最高責任者が閣僚宣言支持を表明した。宣言は、世界共通の目標に21世紀における水安全保障の確保を掲げ、水資源管理にかかわる国連の役割の重要性を確認した。水フォーラムでの討議を受けて国連大学はユネスコと共同で、国連世界水資源開発報告の作成に取りかかった。
次の第3回世界水フォーラムは2003年に日本で開かれるが、国連大学は日本政府の協力機関としてフォーラム開催を支援することが決まった。国連大学プログラム「水・環境・保健に関する国際ネットワーク」(UNU/INWEH)はニューヨークの国連経済社会問題局の依頼で、水資源管理に関する「バーチャル学習センター」の開発に協力する。また、2000年にはラニア・ヨルダン王妃がUNU/INWEH国際諮問委員会議長に就任した。
国連大学全体では、多くのプロジェクトでそれぞれジェンダー問題を取り上げているが、国連大学戦略計画2000では、ジェンダー問題をより適切な形で主流化することを謳っており、それに沿った行動計画「ジェンダー・アクションプラン」具体化への一歩として、国連大学は、ジェンダー関連の諸問題の中で国連大学が最も貢献でき、かつ緊急性のある領域特定のための専門家会議を開いた。その結果、研究成果を政策に反映するためのジェンダーネットワークの中核として機能することが国連大学にとって最もふさわしい役割であり、かつそのネットワークは南北視点の同調を重視すべきであるとの答申が得られた。
能力育成情報通信技術(ICT)の進歩とインターネットの柔軟な機能は、能力育成事業における新しい取り組みを開発する絶好の機会をもたらした。国連大学高等研究所(UNU/IAS)のバーチャルユニバーシティー構想(VUI)は、インターネットを通じて教育、研究、知識の普及を拡大、強化する新しい手段を提供する。国連大学は、先進国と途上国社会の間に存在する知識のギャップを埋めることを目標のひとつに掲げるが、最終的にVUIはその主要手段となることを目指す。また、世界各地の国連諸機関がそれぞれのプロジェクト活動の内容を教育・学習用にモジュール化するうえでの支援システムとしても機能することが期待される。国連大学は今年度、国連環境計画(UNEP)ならびにノルウェーのいくつかの機関と共同で、「グローバル・エンバイロンメンタル・アウトルック2000」を参考にしたモジュール化した対話方式の研修教材を開発した。
国連大学リーダーシップ・アカデミー(UNU/LA、所在地:アンマン)は「ジェンダー問題主流化への挑戦」をテーマに第1回女性リーダーシップ研修コースを2000年6月に実施した。北京の世界女性会議で決まった行動基本計画に沿って、意志決定プロセスに参加しうる能力をもつ女性の育成を目的としたコースで、ルイーズ・フレシェット国連副事務総長、メアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官、キャサリン・バーティーニ世界食糧計画事務局長らが講師を務めた。
国連大学国際講座の第1回定例講座が2000年春、東京で開かれた。将来、政府機関や企業などで国際分野の活動を目指す選ばれた大学院生や若手社会人を対象とする研修講座で、第1回講座では「武力紛争と平和維持活動」「環境の制度とガバナンス」「人権:概念と問題点」「国際貿易と紛争処理」の4テーマに焦点が当てられた。
知識のネットワーク国連大学は国際的学術社会のなかで同様の領域で活動する機関との提携をつねに模索するが、最近は、世界各地の大学との提携関係と平行して、国際大学協会(IAU)、国際大学学長協会(IAUP)、国際学術連合(ICSU)、世界科学アカデミーパネル(IPASW)など、学術機関ネットワークを通じた新しい協力関係が広がり始めている。国連大学の食糧・栄養ネットワーク(UNU/FNN)が国連食糧農業機関(FAO)と共同で、インド、グアテマラ、タイ、チリ4カ国の関連研究機関の基盤強化に大きく寄与しているのも、その一例である。UNU/FNNでは現在、サハラ以南アフリカ諸国を対象にした新しいプログラムも立ち上げつつある。また、乾燥地域での持続可能な土地利用に関するネットワーク活動も進んでいる。
国連大学は過去20年以上にわたり、地熱エネルギーの効率的利用を重点的に推進してきた。その主体である国連大学地熱エネルギー利用技術研修プログラム(UNU/GTP、所在地:アイスランド)が、2000年5月28日から6月10日まで別府市と盛岡市で開かれた「西暦2000年世界地熱会議」の開催に大きくかかわった。この会議は国際地熱学会(IGA)が5年ごとに開催するもので、2000年の会議には61カ国から研究者、技術者を含め1,250名が参加し、研究論文670点が発表された。発表論文のうち88点は、1979年から99年までにUNU/GTPで研修を受けた元国連大学フェローによる研究発表であった。
新しい知識の創造・共有を目的とした、各国の開発問題の研究機関やシンクタンクによる国際研究組織「グローバル・ディベロップメント・ネットワーク」に国連大学本部も少なからず貢献している。2000年にはネットワークの年次会議が「開発への学際的取り組み」をテーマに東京で開かれた。国連大学が主催したパネル討論では、一流の専門家4人が、開発に関する理解、開発政策、開発の実践について、それぞれの専門領域における主要な進展を討議し、開発をめぐる諸問題解決に向けて、専門分野を超えていかに効果的な協力が可能かについて討論した。
国連大学本部は、アフリカ山岳協会、アンデス山岳協会、あるいは学術誌Mountain Research and Development(山岳研究開発)など、山岳の持続可能な開発のあり方を研究する国際的研究ネットワークをさまざまな形で支援してきた。「国際山岳年」に指定された2002年を目前にして国連大学ではこの領域に一層力を注いでいる。天然資源の涸渇、生物多様性の減衰、人口圧力、社会インフラの不備、地域社会による適切な管理の欠如など、山岳開発をめぐっては問題が山積しているが、国連大学ではそれらの問題に関する研究協力を恒常的に進める目的で国連大学地球山岳パートナーシップ・プログラム(UNU GMPP)を新たに発足させた。
国連のシンクタンクアナン事務総長は、1997年に発表した国連改革計画で国連大学はじめ国連の諸研究機関に対して、国連の主要活動分野において、世界中の既存の知識、研究データ、専門能力をより効果的に活用するよう呼びかけた。それに応えて国連大学は戦略計画2000のもとで、国連事務総長室、事務局、ユネスコ、国連開発計画、国連食糧農業機関、世界気象機関など国連システム内の多くのパートナーとの連携を一層強化してきた。2000年6月、国連ジュネーブ事務局と国連大学は、国連システム内部の研究機関相互間と、それらの機関とその研究成果を利用する側の国連の政策立案者との間の協力関係を強化する目的で、政策研究懇談会を毎年、ジュネーブで開くことを決めた。過去数カ月のアナン事務総長の発言には、紛争予防、貧困撲滅、IT戦略などに関する国連大学の研究成果がしばしば引用されている。
10月24日の国連デーを初日に、3日間にわたる国際会議「グローバル・エトス」が国連大学と同高等研究所の主催で開催された。2001年の「国連文明間の対話年」を視野にいれた国連大学の最初の催しであるこの会議に続いて、2001年前半に「文明間の対話」をテーマに国連大学とユネスコが共同でワークショップを4回開き、7月下旬から8月上旬にかけて東京と京都で開く国際会議でその成果を総括した。
国連大学は研究プロジェクトの実施に当たり多くの国連専門機関と協力している。2000年度には、ユネスコと共同で世界高等教育会議(1998年、パリ)のフォローアップ作業、UNITWIN・ユネスコ講座プログラム、世界科学会議、社会変革管理プログラム(MOST)などを実施したほか、国連開発計画とは、共同で開発した世界所得格差データベース(WIID)の利用促進のための活動やワールド・ガバナンス・サーベイの試験段階の作業を共同で実施している。
国連大学では、地球規模の諸問題のうち特に重要なものに関して国連システム内部の意識と理解を高める目的で、パネル討論会やワークショップ、セミナーなどを随時、ニューヨークの国連本部または国連ジュネーブ事務局で開いている。2000年には「コソボ危機の意味」「国際機関の正当性」「ITと経済成長」「貿易と開発」「女性のリーダーシップ」「エルニーニョ:極端な異常気象現象による被害の軽減」などのテーマを取り上げた。
知識の普及と公開講座米国のケーブルテレビ局CNNは、国連大学を紹介するスポットビデオを世界中の視聴者向けに放映している。ビデオは60秒、30秒、15秒の3種があり、2000年8月1日から毎日、CNNインターナショナルで1日6回ないし9回、6ヵ月間継続して放映されており、どのスポットも最後に国連大学のウェブアドレスを出している。このビデオキャンペーンの主目的は、視聴者に国連大学の活動に
2000年に出版された国連大学の研究成果に基づく学術図書は32点に上るが、内13点は国連大学出版部により発行された。出版部では世界各地で開かれる出版見本市や国際会議で大学の出版事業を紹介しており、2000年にはシンガポール、東京、パリ、フランクフルト、北京、ロサンゼルス、ロンドンの出版見本市にも出展した。
国連大学で開かれた国際会議や講演会では、ルイーズ・フレシェット国連副事務総長、ハンス・クング独チュービンゲン大学エキュメニカル研究センター名誉会長、ジャグディシュ・バグワティ米コロンビア大学教授など、各国の著名人多数が講演を行った。国連大学は、アフリカ統一機構設立記念日(アフリカ・デー、5月25日)を記念し、外務省、在京アフリカ外交団との共催で、国際会議「アフリカからのメッセージ−平和、進歩および繁栄に向けてのアフリカの役割」を5月に開催した。これは、沖縄で開かれた主要先進国首脳会議(G8)へ向けたアフリカ諸国からの提案作成の目的も含む会議で、アマドウ・トゥマニ・トゥーレ・前マリ共和国大統領、小和田恒・国際問題研究所理事長、K・Y・アモアコ・国連アフリカ経済委員会事務局長らが講演した。やはり5月に、イスラーム諸国会議機構(OIC)とイスラミックセンター・ジャパン主催のシンポジウム「東アジアとイスラーム世界−一世紀にわたる日本とイスラーム世界の交流」が、国連大学の協力により大学本部で3日間にわたり開催され、アゼディン・ララキ・イスラーム諸国会議機構事務局長、アル・シェイク・サウジアラビア・イスラム指導相、アブダラ・ビン・サリ・アルオベイド・世界ムスリム連盟事務局長などによる基調講演が行われた。
組織の発展ならびに財務・事務の概況
欧州では、環境と人間の安全保障に関する研究・研修センター(UNU/EHS)をドイツのボンに新設する計画に対して強力な支持が得られたほか、ヨーロッパ・カレッジおよびベルギー・フランダース政府と共同で国連大学地域統合比較研究・研修プログラム(UNU/CRIS)をブリュージュ(ベルギー)に開設した。アジアでは、韓国の光州科学技術院(K-JIST)との共同事業の一環として、K-JIST/UNU奨学生プログラムを創設。2001年から発足するプログラムでは、毎年途上国から修士課程に11名、博士課程に6名の学生を「持続可能性のための科学技術」のテーマでK-JISTの各学部に受け入れる。
2000年6月から、財務、予算、人事管理のためのコンピューターによる会計システムFBPMSが導入された。今後は世界各地のすべての国連大学の施設で同一のシステムが使用される。
国連大学では、本部施設を広く一般に開放し、より親しみやすい施設とするための計画を立案中で、近い将来、本部ビルの1・2階部分を改装して、国連の活動を広く紹介し、国連と日本の人々を結ぶ場となるような展示や催しを数多く開催する予定である。2000年には、国連諸機関の東京事務所が相次いで入居し、ゆくゆくは、東京における「UNハウス」といった施設となることを目標としている。
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