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国際連合大学戦略計画2000
 〜人間の安全保障と発展のための知識に貢献〜
 
はじめに
「国連大学の戦略計画2000」は、国連大学の研究と能力育成機関としての効率を高めるためのビジョンを総括したものです。このビジョンは国連と加盟国、世界の人々のために適切で有益な貢献をし、グローバル化が進む世界における地球規模の大学として、重要な機能を実現するための戦略でもあります。「戦略計画2000」は4年間の実施期間中に、大学の使命、主な役割、目標、目的にさらに焦点を当て、今後の主なプログラム、活動の概要を明確にしていきます。また、国連大学の活動、とくに研究、政策研究および能力育成活動の水準を、可能な限り高めていくための指導原則を明らかにしていきます。このようなビジョンを実現するため、戦略計画は大学の活動全般、とりわけ管理プロセスにおける高水準と効率化を重視し、今後4年間に国連大学各機関が達成すべき多くの目標を設定します。
 
国連大学の使命と役割
国連大学は人間社会、とりわけ開発途上国の安全保障と発展に関する地球規模の問題について知識を開発し能力を育成する、学術研究者の国際的共同体です。国連大学は国連システム内の学術機関として、知識の進歩を図ると同時に、知識を適正な政策決定に応用することのできる特別な立場を与えられています。国連大学は国連大学憲章によって、とくに研究課題の選択と成果の公表について、知的な自由を保障されており、客観的立場で高水準の貢献を実現することができます。世界的に関心の高い緊急課題の解決に不可欠な具体策に重点を置く研究活動が進められています。

1970年代初めに国連大学の創設に携わった人々が掲げた国連大学の使命と目標は、現在も今日的な意義を失っていません。おそらく25年前以上に適切だと言えるでしょう。国連大学の使命は次の通りです。
国連とその加盟国および国民が関心を寄せる、
緊急かつ地球規模の問題解決の努力に、
学術研究と能力育成をもって寄与すること

国連大学には、国連大学憲章に基づいて、以下4つの主要な役割が課せられています。
・学者・研究者の国際的共同体としての機能
・国連と国際学術社会の橋渡し
・国連システム全体のシンクタンク機能
・能力育成、とくに途上国における能力育成への寄与
 
国連大学の組織
国連大学は東京に本部を置き、世界各地の12の研究・研修センター、プログラムで具体的な問題についての研究を進めるとともに、世界中の研究者、学者の協力ネットワークを組織しています。
 
変化する環境
「戦略計画2000」は国連大学の外的環境を形成している各種の問題、プロセス、アクターを明確にしています。国連の創設以来、世界は多くの面で著しい進歩を遂げました。しかし、進歩は常に実現可能なわけではありません。平和と繁栄という国連の目標は、地球上の多くの人々にとって、むしろ以前より実現が困難になっています。地域、国、世界のあらゆるレベルで所得格差が拡大しています。核の対立や国家間の戦争の危機は遠のきましたが、地域紛争や複雑な人道的危機は、1980年代中頃からむしろ顕在化しています。現在、13億人が安全な飲み水を得ることができず、肥沃な農地、汚染されていない水や空気、エネルギー源、新鮮な空気といった不可欠な資源の不足、さらに天然資源の持続不可能な利用について、懸念が高まっています。新世紀を迎えた現在、国際社会はこうした多くの深刻な課題に直面しているのす。
 
主要プロセス
「人間の存続、発展、福祉」に重大な影響を及ぼしている主要プロセスとしては、グローバル化、国際化、自由化、民主化、地域化、技術変革、人口の変化と移動、環境悪化、資源の枯渇などを挙げることができます。その影響は深刻であると同時に多岐にわたります。世界の多くの地域で生活水準の向上が見られる一方で、多くの「古くから」の課題が悪化、または拡大し、新しい課題が次々と出現しています。このような重大なプロセスが及ぼす影響を評価する試みはもちろん可能ですが、どのような結果が生まれるかについては、慎重に見守る必要があるでしょう。プロセスは結果を予測できるものもあれば、予測が困難な場合も少なくありません。結果が一つの方向に動くこともあれば、いくつかの異なる問題を生み出す可能性もあるのです。
 
主要アクターのグループ
「人間の安全保障と発展」に関与するアクターとしては、政府、市民社会、民間部門、多国間・二国間組織の四つを挙げることができます。国連大学はこれらのアクターと二つの面で重要な関わりを持っています。一つはそれらのアクターが国連大学に研究目標を提供していることです。対象は主にアクターと重要な地球規模のプロセスとの相互関係がもたらす影響について考慮されています。もう一つは実際的な面で、これらのグループのメンバーと組織は国連大学の事業に深く関わっていることです。
 
プログラム領域とテーマの方向
国連大学の研究課題の特色は、上記の主要プロセスの変化と改善のシナリオを含んだ深い知識と十分な理解に貢献すること、さらに国際社会が直面している地球規模の緊急課題の解決へ向けて支援を進めていくことにあります。

国連大学の活動は国連大学憲章、国連の継続的な政策課題と関心、大学が過去25年間に取り組んできたテーマと方向、大学本部および研究・研修センター、協力機関の専門知識などの分析に基づいて、以下二つのプログラム領域に重点を置いています。

1. 平和とガバナンス
国連のビジョンと理想に忠実であるためには、国連大学は平和、安全保障、ガバナンスの問題と取り組まなければなりません。国連大学のプログラムはガバナンス(政治、司法、行政機関の性質と効率、人権と民主主義の問題)、紛争予防(紛争のルーツと原因、予防外交、子供の兵士の廃止、対人地雷の全廃)、紛争(平和維持活動とその他の紛争管理技術)、および紛争の事後処理(和平調停)などの措置に重点を置いています。これらの問題に取り組むには前向きで革新的なアプローチが必要であり、最も広い意味での平和、ガバナンス、安全保障の概念を明確にしなければなりません。

2. 環境と持続可能な開発
国連大学は、開発、科学技術、環境、さらにそれらの相互関係を重点的に研究しています。貧困と不平等、経済成長と雇用などの問題は国連大学の中心課題です。また、グローバル化、技術変革(情報、ソフトウエア、バイオテクノロジー)、都市化などの問題を取り上げ、人々や社会への影響を追究しています。地球規模の環境、天然資源の管理、持続可能なエネルギーの利用と生産なども重要なテーマです。
 
テーマ領域
国連大学内部の一貫した研究姿勢を維持し、外部の関係者に対して大学活動の透明性を高めるため、国連大学は二つのプログラム領域の活動に五つのテーマ領域を設け、研究、能力育成、ネットワーク構築、研究成果の普及などの活動を展開しています。これらの領域は(1)平和と安全保障、(2)ガバナンス、(3)開発、(4)科学技術と社会、(5)環境です。各プログラムはすべてを網羅しているわけではなく相互に関連している側面も持っています。

研究活動の多くの部門にまたがって、さまざまな問題を取り上げることも重要です。たとえば、グローバル化、グローバルな公共財、人権、倫理、ジェンダー、水と食糧の確保、「フォーカス・アフリカ」などです。
 
開放的で積極的な組織
国連大学は今後も、積極的で開かれた組織となる努力を続けていきます。多様な原理、文化、地域、管理体制に対して広く開かれ、積極的に連携関係を育てていきます。こうした姿勢により国連大学は真の意味で一般の人々に対して開かれたものとなり、その理想を追い、また実績を高め、また進行中の事業を推進していくことができます。国連大学は大学の目標と両立する、またはそれを補足する目標を掲げる世界中の機関と提携関係を育てることにも努めています。財政や人材面での制約で、組織や個々の研究者と資金的関係を持つ上で制限もありますが、今後数年間に研究活動をさらに拡大するような提携関係の確立に資源を投入していく予定です。
 
国連システムとの関係を強化し、国際的学界との関係を深める
今後の数年間に国連大学と外部との関係で重要な要素となるのは、大学の国連システムとの関係、貢献を強化することです。国連大学は国連各機関の責任者やスタッフとの組織的な協議を通じて、優先的課題と共通の関心事項を明らかにするよう努めています。また国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、国連食糧農業機関(FAO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)など、多くの国連機関と戦略的パートナーシップを強化しています。

国連大学の対外関係における第2の重要な領域は、国際的学界のメンバーとの関係を深めることです。国連大学は、研究および能力育成プログラムにおける直接的な協力を通じて、とくに途上国の大学、研究機関と幅広い接触を強化していきます。この目標は主にこれらの研究機関を国連大学の既存の、または新しいネットワークに迎えることにより実現されます。戦略的パートナーシップ、連携機関、協力機関など、提携にはさまざまな形があります。さらに大学内の途上国および若い研究者との結びつきを広げていくことも重要です。国連大学を戦略的パートナー、協力研究機関と結びつけ、研究成果を世界中の研究機関に提供するために、情報通信の技術が幅広く活用されるでしょう。
 
国連大学の中核的な活動機能を改善する
国連大学は、人間の安全保障と発展に関する地球規模の緊急課題を解決するための知識を、4種類の活動を通じてさらに深めていきます。とりわけ、知識の創造、教育と援助活動の目標に関連して、国連大学は(i)研究、(ii)政策研究、(iii)能力育成、(iv)普及活動を推進していきます。国連大学の研究活動は、基礎研究、応用研究の各分野において革新的な技術と方法論を駆使し、多様な文化とさまざまな分野にまたがって進められています。地球規模の各プロセスの研究を通じ、人類すべての生活水準の向上を目指し、前向きの提案を行っていきます。

国連大学の研究は学術的、国際的な信頼性を維持するため、堅固な学術的基礎を持ち、厳密な方法論に従っています。国連大学はその政策研究を通じて、国連と加盟国が関心を持つ政策関連の問題を分析し、提案を行うことにしています。国連大学は今後も、国連とその関係機関の戦略的頭脳として機能していくでしょう。国連大学の能力育成活動は個人、グループ、組織の自発的な学習、技術の創造、開発活動の実施のための能力開発の促進に努めています。また研究成果の普及や広報活動としては、現場の活動家、研究者、政策立案者、一般の人々を対象として、幅広く斬新な方法で情報提供に努力していきます。
 
効率的な組織
国連大学を研究、能力育成、普及活動の卓越した中枢システムとするためには、大学の財政、人事、機構の管理を改善していく必要があります。これは国連大学本部が国連大学システム全体の戦略的管理機能を高めることを意味します。計画期間中には次の領域が検討対象になります。
・戦略的および年間の計画システムの強化
・品質保証メカニズムの強化
・資金源の多様化
・組織内での資金調達戦略の調整と重点目標の設定
・行政管理、財務面の手続きの強化
・資金計画と投資
・国連大学のニーズに合わせた人事政策の策定
・内部、外部との連携・広報活動の改善
・設備の効率的な活用
 
結論
国連大学の使命は依然として多くの困難な課題を抱えていますが、大学は未来へ向けてその態勢を整えつつあります。国連大学は「戦略計画2000」に描かれた目標と使命を達成する意志を固めており、それによって「国連システムの大学」としての責任を果たそうとしています。


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